弁護士コル先生の『ためなる』コラム ~その11~

刑事弁護の難しさ
~飯塚幸三被告人の公判記事を見て~


池袋の自動車暴走事故で松永真菜さん、莉子さんが亡くなられた痛ましい事件の記事で、(飯塚被告人がトヨタの報告で車に不備がない、という結果が出ているにもかかわらず、車の故障を主張して無罪主張をしていることで非難を浴びていますが)飯塚被告人が遺族からの「刑務所に入る覚悟はあるか。」との質問に対し「あります。」と回答し、その上で仮に有罪になった場合の控訴について「できるだけしないようにしたい。」といった趣旨の回答をしたのに対し、弁護人からの同じ質問に対して「分かりません。」と答えたことについても批判がなされているようです。

この事件、飯塚被告人が逮捕・勾留されなかったことについて、「上級国民」等と揶揄されていましたが、多くの方が解説しているように、法律家目線で言えば、既に証拠の回収も終了し、飯塚被告人の年齢や身体の状況からして逃亡のおそれがなければ、身体拘束という重大な人権侵害を加えないことが、判決によって有罪が確定するまでは被告人は無罪であるという推定無罪の原則からすれば、十分にあり得る結論だと思います。

そして、この事件、弁護人としては飯塚被告人が無罪主張をしている以上、事件についてあたかも認めているかのような発言については、被告人の利益の実現が弁護人の使命である以上、潰しておく必要があります。
今回のケースで言えば、遺族の方の質問はあくまで有罪となることを前提として、その場合の被告人の控訴に関する気持ちを聞いたものであるため、被告人が罪を認めているかの様な回答とも捉えられかねません。弁護人としては、その返答をリカバリーする必要があります。
確かに、世論からすれば飯塚被告人の主張は客観的事実に反しますし、被害者感情を煽っていることになるとは思います。

しかし、弁護人の目的は被告人の利益の最大化ですし、被告人が「過失がない」と主張する以上、弁護人がこの主張に反する主張もできません。弁護人の立場を考えると中々悩ましいんだろうなぁと思ってこの報道を見ていました。
弁護人が誰なのか、国選弁護なのか私選弁護なのかはわかりませんが、弁護人に就任した以上、ベストを尽くすのが仕事であることは言うまでもありません。

そのため、どうしても世論とは離れた考え方になってしまうことが多いです。
世論=裁判所の考えではないものの、批判を受けながら行動しなければならない刑事弁護の難しさ、少しは分かっていただけましたでしょうか。中々難しい問題なのです。

 

2021年6月25日 ご執筆c様
(※ 掲載内容は、執筆当時の情報をもとにしております)

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