『ためなる』コラムその25:法的根拠があるかないか~その2~

法的根拠があるかないか~その2~


前回の記事で、ご自身の主張に法的根拠があるのかないのかをしっかりと判断することが必要だ、という例を私が相談を受けた方の実例を挙げて説明しました。
実例を挙げて説明する形は今後も時々取らせていただこうと思いますが、今回も感情論と法的根拠をしっかりと区別する必要があることを私の経験を踏まえてご説明できればと思います。

感情論の対立が激しくなるのが男女問題です。
不倫(法的には不貞という表現になります)された側が、不倫した側及びその相手を訴えることになるのですが、よくあるのが、不倫相手側から「夫婦関係は終わっていると聞いていた」といった主張がされることです。
当然、不倫された側は「そんなことはない!」と怒りをあらわにし、紛争状態に陥ります。
以前別の記事で、不倫で訴訟する場合の証拠の用意の重要性や、慰謝料が認められる場合の相場について述べましたが、日本において裁判で判決に至る場合、離婚に至るのであれば200万円程度、そうでない場合(離婚はしない場合)であれば100万円程度が相場になります(事案の悪質性や実際の夫婦関係によっても金額は上下することがあります)。

交渉段階で例えば慰謝料を請求する側が「500万円でないと示談しない」という場合に、請求される側が時間と手間を買う、という趣旨でその金額で合意することはあり得ますし、そういった請求をすることは自由です。

もっとも、その金額を訴訟でも維持することは非常に困難です。
今回の方の場合、交渉は私ではない他の弁護士が担当し、訴訟に至るにあたり弁護士を事情があって変更することになり、私が担当することになりました。

この方は交渉段階で500万円の主張をされており、それと別に探偵に使った費用約100万円も請求されていました。
そのため、提訴段階では合計660万円の請求を行わざるを得ませんでしたが、私は上記の相場を伝えた上で、適切なタイミングでの和解が裁判所から提示されるようであれば和解すべきことを伝えていました。

実際の審理では婚姻関係の破綻をうかがわせる証拠も存在したことから、裁判所は弁論準備手続において、私に対して「判決するなら高くて100万円、婚姻関係の破綻が認められれば0円もありうる。そこで、早期解決の観点から200万円での和解を検討してほしい」との指示を出しました。
当初依頼者の方は最初の先生から聞いていた話が違う、200万円で離婚することになるのは納得がいかないと言っていましたが、私からすればこのタイミング、この金額での和解は依頼者の方の実利を考えたときに絶対にしたほうが良い旨を説得し、和解に至ることができました。

感情論で100%の納得はいただけたとは思いませんが、最終的に実利は確保できたのではないかと思います。
もっとも、最初の段階から見通しや法的根拠がある金額なのかも含め、しっかりと説明する必要があることを痛感した事案でした。

 

2022年1月27日 ご執筆c様
(※ 掲載内容は、執筆当時の情報をもとにしております)

※ ご利用にあたって
当サイトでご提供する全コンテンツのご利用は、当サイト内(オンライン上(https://www.lawdoku.com/から始まるURL上))にのみに限らせていただきます。また、当サイト内のすべてのコンテンツにつきまして、ダウンロードやその他の方法による当サイト外への持ち出しは、理由のいかんを問わず固くお断りいたします。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA