『ためなる』コラムその81:通知書等での期限の設定の仕方について

通知書等での期限の設定の仕方について


弁護士が仕事のご依頼をいただいた場合、通常の民事事件(例えば、損害賠償請求や貸金返還請求のような事件)であれば、まずは、通知書を相手方に送り、依頼者の代理人に弁護士が就任したことと、依頼者の請求事項を相手方に知らせることになります。
(依頼者の方からすると、「早く提訴して早く解決してくれ!」というご要望があることは重々承知しているのですが、通常、まずはこのような書面を相手方に出して交渉を試みる、というのが、結果的に早期の紛争解決や任意での支払いを可能にする可能性があるので、すぐに提訴することが必ずしも得策ではないことは以前、別の記事でご説明した通りです)。

その際、大体発送日から2週間程度での回答期限を設けることが多いです。例えば、「…上記の次第ですので、令和●年●月●日限り、下記口座まで上記金額をお支払いください。万が一、上記期限までにご入金が確認できず、かつ、貴殿より何らのご連絡もいただけない場合には、やむを得ず、上記金額の支払を求める法的手続を採らざるを得ませんので、念のため申し添えます」といった形です。
ここで、最近、依頼者の方から言われて、改めて思ったのが、この期限の設定の仕方です。

上記の通り、通常は2週間程度を期限として設定することが多いです。
これは、何故かというと、2週間程度あれば、先方も十分に、その案件について検討することができると考えられますし、弁護士に相談する時間も十分に確保できるといえるからです。その上で、先方にも代理人が就任するようであれば、その期間内に連絡を貰うことで交渉をスタートすることができます。繰り返しになりますが、訴訟提起の方が気分はいいかもしれませんが、結論として納得のいく判決を得られなかったり、判決を得たとしても回収できなかったりと、その後のステップも煩雑ですので、可能であれば交渉で終了させる方がベターといえます。

その依頼者の方は「何故、そんなに長い期間を設定するんですか?一週間程度でよくないですか?」といった話をされていましたが、1週間ですと、仕事の都合などもあり、先方が相談に行く時間等も確保できない可能性もあります。
もちろん、依頼者の方からすれば、腹の立つ相手になんでそんな猶予期間を設けるのか、というお気持ちを持つことは十分に理解できます。

しかし、弁護士に依頼される以上、やはり、弁護士としては感情論ではなく、依頼者の方の利益を最優先すべきです。もちろん、事案によっては経済的な合理性ではないものを重視する場合もあるとは思いますので、この期間設定が一律に正しいわけではありません。

しかし、期間設定をすること自体に一定の意味があること自体はご理解いただきたいですし、弁護士としては真摯に説明しなければならないと感じた一件でした。

 

2024年7月18日 ご執筆c様
(※ 掲載内容は、執筆当時の情報をもとにしております)

※ ご利用にあたって
当サイトでご提供する全コンテンツのご利用は、当サイト内(オンライン上(https://www.lawdoku.com/から始まるURL上))にのみに限らせていただきます。また、当サイト内のすべてのコンテンツにつきまして、ダウンロードやその他の方法による当サイト外への持ち出しは、理由のいかんを問わず固くお断りいたします。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA