期限の利益とは?
前の記事で、銀行からの借入の際に、ほぼ100%の確率で、期限の利益喪失約款がついている、という記事を書きました。
今回は、前回の記事で唐突に出てきた感じのある、「期限の利益」とはそもそも何なのか?ということを説明していきたいと思います。
「期限の利益」というのは、金銭消費貸借契約(ようはお金の貸し借りの契約)において、よく用いられるものです。
当たり前のことですが、お金を借りる側の人には、(もちろん、全ての方がそうではないと思いますが)近いタイミングでお金が必要な場合が多いでしょう。通常、その長短は別としても、返済期限を設けることになります。この借りた日~返済期限の期間というのは、お金を借りた人が、貸してくれた人に対して、そのお金を返済しなくても良い期間、ということになります。この期間の事を「期限の利益」といいます。
銀行のローン等が典型例ですが、分割での支払いの場合、例えば毎月末日が返済日だとすれば、それぞれの支払い分ごとに期限の利益が付けられている、ということになります。
期限の利益は金銭消費貸借契約のみに限られず、付けられることがあります。例えば、請負工事代金の支払の分割(契約時●円、着工時●円、完成引渡時●円といった形等)や、訴訟の和解においても解決金の支払に際して付けられることになります(現金を席上交付するような場合であれば例外的に期限の利益を付けられていない、ということになりますが…)。
このように期限の利益というのは、お金を支払う側の人にとってメリットのある条項、ということになります。
では、期限の利益を喪失する、というのはどういった意味になるでしょうか。
簡単に言うと、貸した側の人が設定した支払期限を過ぎたり、その他、定めた事由に該当した場合は、『もう借りた側の人を信用できないから一括+利息を付けて返してね』ということです。
返済期限を徒過した場合に一括で返せ、というのは非常に分かりやすい例だと思います(分割ですら返せない人から貸したお金を回収できると考える人はいませんよね)。
会社が銀行で借り入れをしている場合、会社や代表取締役に差押え等の保全処分がなされた場合も、この期限の利益喪失約款が発動することがほとんどです。
裁判所を通じた保全処分がされる、ということはその会社(法人)又は多くの場合連帯保証人となっている代表取締役に対して誰かしらの債権者がいることを意味します。そして、その債権者が有している債権について一定の理由がある、と裁判所も判断した、ということです。
そうすると、貸した側としては、平たく言えばとりっぱぐれる危険が高い、なので、自分もすぐに全額回収できる状態にしたい!というわけです。
これが期限の利益の喪失、ということになります。
お金の貸し借りの際には挿入されていることが多い条項ですので、その意味はしっかりと理解しておくことをお勧めします。
2024年8月20日 ご執筆c様
(※ 掲載内容は、執筆当時の情報をもとにしております)