法的根拠があるかないか~その9・交通機関が麻痺!?~
先日、私は夏季休暇を取り、沖縄に旅行に行きました。現在も列島を横断するかも!?と言われている台風が九州に接近中ですが、私が沖縄に行っていたときも、運悪く台風が接近してしまい、予定していた帰りの飛行機のフライトがキャンセルとなってしまいました。
この時、私は臨時便が出るだろうと考え、キャンセルが決まった翌日に、臨時便を押さえ、予定していたフライトの代金の返還を受けることで無事に帰ってくることができました。
空港では、航空会社のスタッフに対して、
「フライトが見つからなかったら、ホテル代は補填してもらえるのか」
「他のフライトが見つかったとして、差額は補填してもらえるのか」
といった質問をされている方が少なからずいらっしゃいました。
さて、これらの要望は通るのでしょうか?
結論から言うと、約款次第、ということになります。
約款というのは、一々サインや判子を押すわけではないものの、契約の内容となっている書面のことです。
私達は日々、色々な契約を締結しています。そこに一々サインや判子を押したりしているわけがないのは、皆さんもご存じのことと思います。
例えば電車に乗るとき、コンビニで買い物をするとき…といった日常の場面も厳密に言えば契約を締結して、履行しているのです。
そこで役に立つのが約款です。中々表示はされていませんが、切符を買うときや航空券を購入するときに(特にネットで購入するとき)は、「●●約款に従うことを了承します」といった文言が購入確認画面などに提示されていることが多いです。
例えばANAであれば
国内旅客運送約款|ANA
ここに約款がありますので、その中身は確認することができます。
第8条には
「旅客は、この運送約款及び同約款に基づいて定められた規定を承認し、かつ、これに同意したものとします」とあり、客がこの約款に同意して搭乗することが記載されています。
そして44条には、会社都合の場合でない限り、賠償責任は負わない旨が記載されています。例えば、機材が届かなくてフライトがキャンセルになるような場合であれば、乗客の損害を補填してくれる、ということになるでしょう。
しかし、今回のキャンセルは台風が原因です。
それをさすがに航空会社の責任、とするのは無理がある、といえます。
その場合約款の27条に基づく措置を航空会社は取ることになっています。
平たく言えば
①ほかの便の手配
②キャンセル・払戻し
③期間の延長
ということになります。
恐らく、今回のお客さんは①・③の振替便の手配ができなかったので、そういった要求をされているのでしょう。
今回はサンプルでANAの約款を見てみましたが、おそらくほかの航空会社も似たような内容になっているはずです(外資やLCCは例外があるかもしれません)。
しかし、約款からすると、その要望には法的根拠がない、と言わざるを得ません。
スタッフの方も、「申し訳ありませんが、対応いたしかねます」といった答えにならざるを得ないでしょう。
お気持ちは分かりますが、あまりやりすぎてスタッフの方を困らせるのもどうかと思いますので、まずは、契約内容になっている約款を確認し、無理な要求をしないよう心掛けてもらいたいものです。
2024年8月30日 ご執筆c様
(※ 掲載内容は、執筆当時の情報をもとにしております)