雇用法制ついて考える~自民党総裁選を終えて~
先日、石破茂衆議院議員が自民党総裁に選出され、幕を下ろした自民党総裁選挙。この中で、小泉進次郎議員が主張したことで若干焦点が当たったのが日本の雇用法制でした(最終的にはあまり大きな争点にはならなかったように思いますが…)。
日本の労働法は、定年までの終身雇用を前提とした法律となっており、解雇にはかなり高いハードルが設定されています。
労働契約法16条は
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」
と定めており、①客観的に合理的な理由、②社会通念上相当、という要件が課されています(この要件を別々と解するか、総合的に一つの判断基準と解するかはいろいろな解釈があるところではあります)。
一方で、非正規雇用や契約社員を減らせ!というデモはしょっちゅう行われています。
上記の労働契約法16条がある以上、一旦正規雇用(期限の定めのない雇用)をしてしまうと、企業としては容易に解雇できなくなる、ということからすれば、正規雇用を絞ろうとするのはある意味当然の原理です。
この法制度を変えずに、非正規雇用を減らせ、とか最低賃金を上げろ、というのは企業に無理を強いることになるんじゃなかなぁ…というのが私の所感です。
さて、小泉進次郎議員はある意味ここに一石を投じたわけです。するとどうでしょう。今度は「労働者の権利を守れ!」という団体が現れ、小泉議員はトーンダウンせざるを得なくなったわけです(個人的にはもっとハードに攻めてこの部分の議論を活性化してほしかったところではあります)。
アメリカのように雇用した者もすぐに解雇できる制度であれば、企業が高賃金で労働者を雇っても、思惑が外れた時に解雇できるということになるので、高賃金にはつながると思いますし、企業側の積極的な雇用にもつながるでしょう。
労働者の既存の権利と言ってしまえばそれまでかもしれませんが、ここはもっと議論がされてもいい部分ではなかったかと思います。
特に中小企業は、オーナーの判断で従業員を解雇したい、能力不足だから解雇したい、という要望がありながら、上記の法制度のために退職勧奨を行い、いくらかのお金を支払って会社を辞めてもらうという話が少なくありません。
こういった中小企業の悩みや、正規雇用を増やせと訴える人の悩み、一方で労働者の権利を守れと主張する人の訴え、これらをどのように舵を取り、今後法制度の改革につなげるのか、それとも既存の法制度を維持するのか、石破新総裁・新首相がどういった判断をしていくか、注目しています。
2024年9月27日 ご執筆c様
(※ 掲載内容は、執筆当時の情報をもとにしております)