入学金が戻ってこないのは…
今年も11月に入りました。
段々寒くなってくると同時に、この時季だと紺色ルックの親子をよく見かけるようになりました。恐らく、幼稚園か小学校の受験でしょう。来年2月であれば中学受験、その後、高校受験・大学受験と、受験生を心の中で応援する日々が始まります。司法試験は全く別の時期ですし、みんな私服なので判別のしようがありませんが…笑
受験といえば、以前問題になり、訴訟まで起こされたのが、入学金・授業料の返還についてです。多くの学校では(地方では異なるという話も聞いたことはありますが…)、入試合格後、入学金や授業料などの費用の支払期限が定められています。そのため、第1志望の学校でなくとも、入学金を支払い、とりあえず進路を確保する事態が発生します。そして、いざ第1志望の学校に合格した場合、当然のことながら第1志望の学校にも入学金や授業料を支払うことになります。
つまりは、親御さんは二重払い、受かった学校の数とタイミングによってはそれ以上の学校に入学金を支払ってしまうことになります。私立の学校であればそれぞれの金額も小さくはないので、親御さんの負担も相当です。しかも、子供の体は当然のことながら一つなので、入学できる学校は一つしかありません。…にもかかわらず、多くの学校は入学金や授業料については入学を辞退した場合でも返還しない、としているのです(特約で定めています)。
さて、入学してもいない学校に入学金や授業料を支払う必要があるのか?という訴訟が起こされました。いわゆる学納金返還訴訟と呼ばれる訴訟です。つまりは入学金や授業料を返還しない特約は有効か?という話です。そしてこの訴訟は最高裁判所まで争われました。平成18年11月27日に概ね以下の内容の判決が出され、入学金や授業料などの返還については一応の決着を見て、現在に至っています。
同最高裁判決は、まず、入学金と授業料の性質を分けて考え、入学金については「入学金は、その額が不相当に高額であるなど他の性質を有するものと認められる特段の事情のない限り、学生が当該大学に入学し得る地位を取得するための対価としての性質を有する」として、その性質上、特約は公序良俗に反するものではないので有効とし、学校(同志社大学)側の返還義務を認めませんでした。
これに対して授業料については、「在学契約の解除の意思表示がその前日である3月31日までにされた場合には、原則として、大学に生ずべき平均的な損害は存しないものであって、不返還特約はすべて無効となり、在学契約の解除の意思表示が同日よりも後にされた場合には、原則として、学生が納付した授業料等及び諸会費等は、それが初年度に納付すべき範囲内のものにとどまる限り、大学に生ずべき平均的な損害を超えず、不返還特約はすべて有効」として、(入学辞退が)3月31日を基準に不返還特約の有効・無効の判断を分けています(消費者契約法の観点からです。)。
考えてみるとなかなか難しい問題ですが、どの家庭にも起こりうる問題だと思います。豆知識として頭の片隅に入れておくのもありな情報ではないでしょうか。
2024年11月20日 ご執筆c様
(※ 掲載内容は、執筆当時の情報をもとにしております)