『ためなる』コラムその91:法的根拠があるかないか~その10~

法的根拠があるかないか~その10~


弁護士ももちろん、ネットで条文を検索したり、法改正を調べたり、知らない法律についての考え方を弁護士がレクチャーするようなホームページを確認したりして、リーガルサーチの一助としています(もちろん、ネット情報だけでリーガルリサーチを終わらせることはありません)。

こういった私の検索履歴のせいなのかもしれませんが、Yahoo!のトップニュースによく、法律コラムのようなものがあがってきます。目にするとついつい見てしまうのですが、本当に弁護士が監修してるのか?といった怪しい情報を見かけることも少なくありません。

今回はその一例を紹介しながら、解説してみたいと思います。

いくつかの記事で、ずっと親の面倒を見ていた主人公と全く親の面倒をみなかったその兄弟の相続に関する問題が取り上げられていました。

要は、それまで親のことを顧みなかった主人公の兄弟姉妹が、親が死亡し、遺産の話になったととたん、「親が全部私に相続させる旨の遺言を書いてくれているから、あなた(主人公)には1円もあげない」とか「法定相続分の遺産は私のものよ!」といった類の主張があり、実際には「主人公に全部相続させる」という内容の遺言があって主人公の兄弟姉妹が成敗される、といったお話です。

…さて、この見解は正しいのか?という疑問です。

「遺産は全て主人公に相続させる」との遺言があり、これがプラスの財産であれば、まず、相続人は主人公、ということになります。もっとも、主人公の兄弟姉妹にこの遺言の効力によって1円も両親の遺産を相続できないのかというと、法的にはそんなことはないのです。

もちろん、遺産について最優先されるべきは被相続人(=故人)の意思です。だからこそ、遺言が重要になってくるのですが、例えば遺言でお世話になった第三者に遺産を全て相続させる等と記載されており、実際にその第三者が遺産を全て相続してしまうと、遺された遺族の生活が立ち行かなくなる場合があります。

法律はそういった点も考慮して『遺留分』というものを民法上定めています。

具体的には民法1042条以下に定められているのですが、簡単に言うと、法定相続分を有する者は、(被相続人の兄弟姉妹を除き)法定相続分の半分については遺産を相続することができる、というものです(最終的には、遺留分減殺請求権というものを訴訟上で行使していくことになります)。

ここまで書けばもうお分かりかと思うのですが、上記した例は結論として間違っている、ということになります。主人公の兄弟姉妹にも遺留分が発生するので、ストーリーとしてスカっとはするものの、主人公の主張・結論には法的根拠がないことになります。

このように、実は間違った知識、というものが色々と出回ってしまっています。頭の片隅で結構ですので、少し知識を入れておいて、御自身を守る術は身に着けておいていた方が得策だと思います。

 

2025年1月21日 ご執筆c様
(※ 掲載内容は、執筆当時の情報をもとにしております)

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