人事異動~訴訟あるある~
4月といえば、新年度です。
多くの企業で人事異動が行われるのもこの時期だと思います。
ところで、訴訟と人事異動も実は無関係ではありません。
裁判官・検察官も4月が異動の時期だからです。
一般論ではありますが、裁判官・検察官は概ね3年周期で異動していることが多いようです。
そして、訴訟の担当裁判官が異動になる場合には、大体2~3月の期日で、「次回期日で異動になる」といったことが暗に示されることがほとんどです(稀に、何の前触れもなく、異動してしまう裁判官もいますが…笑)。
もちろん、異動に際して裁判官が事件の引継は行っているはずです(私は裁判官の経験はないので、憶測になってしまいますが…)。
出ている証拠・書面はもちろん変わることはありませんが、証拠の見方や整理の仕方によって、裁判官が交代することで進行や心証が変わってしまうこともあります。
もちろん、裁判官の交代によってその後の進行が有利になることもあれば、不利になることもあります。
そのため、我々弁護士は裁判官の異動・交代については非常に敏感になります。
東京のような大規模な裁判所であれば、裁判官も大勢いますので、一つの事件の裁判官が代わってもその事件限りと割り切れますが、地方ですと、その裁判官に何件も担当してもらうことになるので、実は影響が非常に大きいのです。
この春、私もいくつか裁判官の異動を経験しました。
ある案件では、従前の裁判官が異動が決まっており、判決を書く気が全くなかったためか、双方の主張が言いっぱなしになっており、中々議論がかみ合っていない状態が3か月程度続いていたのですが、新しい裁判官が争点整理メモを作成し、原告・被告双方に対して、主張・立証が足りていない部分を適示してくれ、今後の進行が早まった、というものでした。
当方が原告であったため、進行が早まるのは好ましい(被告であれば、進行は遅くても構わない)状況となり、私としても依頼者に報告がしやすくなった、という裁判官の異動により事態が好転した一例でした。
逆に、そこまで有利な心証を示されていた事件でひっくり返ってしまったものもあります。
ある不貞の事件であとは尋問だな…と思っていた事件(すでに和解の話もありました)については、裁判官の交代後、当方に証拠の追加の提出が求められてしまいました。
いきなり言われたので、かなりアタフタと準備して提出しましたが、今後の展開は正直に言えば読めなくなったな…というのが所感です。
春は出会いと別れの季節と言いますが、実は訴訟も無関係ではありません。
裁判官も人なので、個々の考え方や相性というものはどうしても存在してしまいます(そのために三審制が採られているとも言えます)。
ご依頼される際には、こういったこともあるんだ…ということを頭の片隅に置いておいていただけると弁護士としては非常に助かります。
2023年5月17日 ご執筆c様
(※ 掲載内容は、執筆当時の情報をもとにしております)