(詐欺又は強迫) 【※ 本条解説へ移動する】
第96条第3項
前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
民法 第一編 第五章 法律行為 条文一覧
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以下、解説です。
【民法96条3項解説】
詐欺による意思表示の取消しは、善意無過失の第三者には対抗できないとされています。
本項の「第三者」とは、当事者及び包括承継人以外の者で新たに法律上の利害関係を有するに至った者をいいます。
例えば、AはBの詐欺により土地をBへ譲渡しましたが、Aが法律行為を取り消す前にBが詐欺について善意無過失の第三者であるCへ土地を譲渡した場合です。
本項は詐欺によって生じた法律行為の外観を信頼して取引に入った者を保護する趣旨です。
したがって、本項の「第三者」には当該法律行為の取消後に利害関係を有することになった第三者は含まれません。
なお、本項でも96条1項に規定されていた強迫については定められていないため、善意無過失の第三者との関係であっても表意者は意思表示を取り消すことができます。
【取消後の第三者】
取消しによって法律行為の相手方から表意者(A)と第三者(C)に対して二重譲渡が行われた場合と同じと考えることができます。
したがって表意者と取消し後の第三者との関係は対抗要件の問題となり、登記の先後で決着することになります。これは強迫によって作られた法律関係についても同様で、取消後の第三者は登記を備えれば保護されることになります。
【詐欺・強迫による取消の可否まとめ表】
取り消すことができる。 (ただし第三者による詐欺の場合は相手方の悪意または有過失が必要) | 善意無過失の第三者に対抗できない。 | ||
対抗問題(177条) | |||
取り消すことができる。 | 対抗できる。 | ||
対抗問題(177条) |
2021年3月22日 ご執筆U様
(※ 解説内容は、執筆当時の情報をもとにしております)
善意無過失の第三者への対抗について、とても分かりやすく解説されています。
強迫と詐欺の事例が混同してしまう方も多いかと思われますが、まとめ表で簡潔に理解する事が出来ます。
また、取消後の第三者との関係についても、登記を要件とする点を丁寧に記載されています。
鈴木様、コメントありがとうございます。
詐欺と強迫の態様・状況を想像すると、本人側に『仕方ない』程度の違いがあって、それにより結論が変わっているという事なのでしょうね。
強迫(畏怖を与えられる)を受けると、実際問題としてその場で毅然とそれに抗うことができる人の方が少ないのかもしれません。