(錯誤) 【※ 本条解説へ移動する】
第95条第4項
第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
民法 第一編 第五章 法律行為 条文一覧
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以下、解説です。
【民法95条4項解説】
95条1項から3項までは意思表示をした者(表意者)と相手方との関係が規定されていました。
しかし、本項では表意者と相手方以外の者との関係を規定しています。
すなわち、相手方との関係では錯誤による取消しを主張できたとしても、第三者が善意無過失であれば主張することができないとされています。
「善意でかつ過失がない」とは、表意者の意思表示に錯誤があったことについて、第三者は知らなかったことに加え、知らなかったことについて落ち度がなかったということです。
本項では心裡留保(93条2項)や通謀虚偽表示(94条2項)の場合と異なり、第三者に善意だけでなく無過失まで要求しています。
無過失まで要求している理由は、心裡留保や通謀虚偽表示では表意者が意図的に意思と表示の間に不一致を表示させているのに対して、錯誤の場合は意図的に発生させたものではないことから表意者の落ち度が少なく、より厳しい要件を第三者に課す規定になっています。
「第三者」とは、当事者または包括承継人以外の者であって、新たに法律上の利害関係を有するに至った者をいいます。
「対抗することができない」とは、第三者に対して表意者から取消しの主張をしても認められないという意味です。
【取消後の第三者】
取消後に利害関係を有することになった第三者との関係では、第三者は善意無過失でなくてもよく、保護されるかどうかは177条の対抗問題となります。
【錯誤による取消の可否まとめ表】
取り消すことができる。 (ただし①重要な錯誤であること、②表意者に重過失がないことまたは相手方が悪意重過失であること) | 善意無過失の第三者に対抗できない。 | ||
対抗問題(177条) |
2021年3月7日 ご執筆U様
(※ 解説内容は、執筆当時の情報をもとにしております)
第三者の保護には善意無過失を要求しているのですが、その要件に至る理由についても分かりやすい記述がされていると思います。(心裡留保や通謀虚偽表示などの、他の意思表示との比較すると納得。)
また「対抗することできない」という法律用語の解説も、初学者には有難いものです。