民法 第722条第2項


(損害賠償の方法、中間利息の控除及び過失相殺) ※ 本条解説へ移動する
第722条第2項

 被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。

民法 第三編 第五章 不法行為 条文一覧




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以下、解説です。


【民法722条2項解説】

民法722条2項には、不法行為の損害賠償の過失相殺について定められています。不法行為があった場合、そのような事態が起きた責任が100%加害者のみにあるというケースばかりではありません。被害者にも過失があったときには、その過失に応じて裁判所が損害賠償金額を定めることができるとしています。

条文では「被害者に過失があったとき」とされていますが、判例では、条文を「被害者側に過失があったとき」と解釈して、より広い範囲でとらえています。例えば、交通事故で同乗している妻が傷害を負ったケースで、運転者である夫に過失があれば、これを加害者の過失と相殺できるということです。

民法722条2項の類推適用として、「不法行為によって発生した利益」がある場合は、その利益を損害から控除する「損益相殺」を行うことがあります。過失相殺と損益相殺の両方が発生する場合は、はじめに過失相殺がなされ、その次に損益相殺することとなります。
過去の判決などから、損益相殺の対象になるものやならないものには次のようなものが挙げられます。

①…損益相殺の対象になるもの
・公的年金保険
年金受給者が死亡したケースで、遺族が受け取れる遺族年金分を損益相殺として控除しました。
・労災保険
勤務中に不法行為による被害を受けて労災給付が行われたケースで、労災保険で受け取った給付金を損益相殺の対象として控除することを認めました。

②…損益相殺の対象にならないもの
・生命保険
生命保険金は保険料の対価として支払われるものであり、不法行為がきっかけで生じたものですが、不法行為と同じ原因から生じた利益とは言えないため、損益相殺の対象にならないとしました。なお、保険金の支払いがあった場合でも、それ自体が被害者の損害賠償請求権を制限するものではありません。
・損害保険
損害保険金も保険料の対価であり、損益相殺の対象にならないとされています。
なお、一般的に、損害保険は支払った保険金を加害者側に請求できる損害賠償請求権を得て、被害者は損害賠償請求権を失う仕組みになっているため、被害者が保険会社と加害者の双方から利益を受けることはできないようになっています。そのため、保険金の支払いがあったことで、被害者は損害賠償請求権を失うことがあり、加害者は被害者ではなく保険会社からの損害賠償請求を求められることがあります。

 

2024年6月22日 ご執筆M様
(※ 解説内容は、執筆当時の情報をもとにしております)

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