民法 第722条第1項


(損害賠償の方法、中間利息の控除及び過失相殺) ※ 本条解説へ移動する
第722条第1項

 第四百十七条及び第四百十七条の二の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。

民法 第三編 第五章 不法行為 条文一覧




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以下、解説です。


【民法722条1項解説】

民法722条1項は、民法709条に定める不法行為によって発生する損害賠償について、その方法などを定めた条文です。条文には民法417条と民法417条の2を準用するとされており、債務不履行責任の損害賠償と同じ考え方によるものとされています。

不法行為による損害賠償は、原則として、金銭による賠償をすることとされています(民法417条の準用)。損害を与える前の状態に戻す「原状回復」によっても損害賠償ができるように思えますが、金銭賠償を原則としているのはなぜでしょうか。

不法行為があったと認められる損害には、「財産的損害」と「精神的損害」があります。
何らかの発言や行動によって精神的苦痛を与えてしまった場合、原状回復することはできません。完全な原状回復をしようとするならば、被害者が受けた精神的苦痛の原因と記憶を完全に消去するしかありませんが、そのようなことは不可能だからです。
また、物を壊してしまったような場合などでも、被害者にとって強い思い入れのある物だったからといって、「思い入れ分を込みにした損害賠償」を認めるというのも合理的だとは言えません。交換価値を上回る損害賠償を認めてしまうと、被害者が加害者の不法行為によって利得を得られるようになってしまいます。
確かに、被害者にとっては原状回復が望ましいことは当然でしょう。しかし、現実的な問題として、原状回復を前提とすると損害賠償額が無限に大きくなる可能性があり、公平性が損なわれてしまいかねません。そのため、社会通念上相当と認められる範囲での賠償責任となるよう、金銭賠償を原則としているのです。

将来得られる利益や将来負担することになる費用について損害を受けた場合、その損害賠償額の算定には、民法417条の2(中間利息の控除)が準用されます。
将来発生する損害を賠償する際、損害賠償額を一時金としてまとめて受け取るのが一般的です。その場合、将来に受け取るべき金額から、受け取るまでの期間に応じた金利相当分が控除されます。控除後の金額を計算する方法には単利のホフマン法と複利のライプニッツ法がありますが、金融の世界での考え方と同様に、主にライプニッツ法が採用されています。

なお、不法行為によって後遺障害が残るような損害を与えた場合などでは、一時金による賠償ではなく、定期金による賠償をすることも可能です。この場合は、損害が発生するタイミングで賠償されるため、中間利息の控除は行われません。

 

2024年6月18日 ご執筆M様
(※ 解説内容は、執筆当時の情報をもとにしております)

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