民法 第709条


(不法行為による損害賠償) ※ 本条解説へ移動する
第709条

 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

民法 第三編 第五章 不法行為 条文一覧




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以下、解説です。


【民法709条解説】

民法709条は、不法行為による損害賠償請求について定めています。
損害賠償請求をしようとするときは、加害者に不法行為があったことについて、被害者側が立証する責任があります。その際、立証することが必要な「不法行為である要件」は、下記の4点です。

①故意または過失がある
加害者がわざと行為をした結果である場合、または、予見可能性があったにもかかわらず結果回避義務を怠った場合は、故意または過失があった状態と判断されます。
結果回避義務について、医師などの専門的な職業に従事する者の場合は、通常よりも高度な基準が要求されると考えられています。

②権利または利益の侵害がある
被害者の権利や法律上保護される利益が侵害された加害行為が対象です。ただし、その加害行為に違法性がある場合という意味であり、あらゆる侵害行為が不法行為の対象となるわけではありません。
この侵害対象となる範囲は時代とともに拡大されてきており、現在でも争われている部分もあります。

③損害が発生している
損害賠償を請求するためには、当然、損害が発生していなければなりません。その損害には、財産的損害だけでなく精神的損害も含まれます。
財産的損害は、被害を受けたものである「積極的損害」と、不法行為がなければ得られた利益(逸失利益)である「消極的損害」に分類されます。精神的損害による損害賠償には、ハラスメントに対する慰謝料などが挙げられます。

④加害行為と損害の間に因果関係がある
加害行為と損害に因果関係があることが求められますが、「あれなくばこれなし」という事実的因果関係だけを前提とすると、損害賠償の範囲が大きくなりすぎるとして、判例では「事実的因果関係が成立していることを前提としながらも、民法416条を準用して、損害賠償の範囲を限定する」というスタンスを取っています。これを相当因果関係と言います。

これら4つの要件を満たしていることが、不法行為として損害賠償請求できる要件ですが、例外も定められています。
その1つは「責任能力がない場合」で、民法712条(未成年者)や民法713条(責任能力を欠く状態にある者)が適用されます。また、加害者が会社員などの被用者である場合は民法715条、正当防衛や緊急避難にあたる場合は民法720条、火災のもらい火については失火責任法が適用されるなどの例外も定められています。

なお、損害賠償がどのような形でなされるのかについては、民法722条・民法723条などで定められています。

 

2024年2月3日 ご執筆M様
(※ 解説内容は、執筆当時の情報をもとにしております)

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