民法 第710条


(財産以外の損害の賠償) ※ 本条解説へ移動する
第710条

 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

民法 第三編 第五章 不法行為 条文一覧




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以下、解説です。


【民法710条解説】

民法710条は、財産以外の損害の賠償について定めたものです。つまり、慰謝料の請求権について定めた条文だと言えます。
不法行為による損害賠償請求について、709条では「財産上の損害賠償」について定めているのに対し、710条は「財産以外の損害に対する賠償」について定めています。

財産以外の損害とは「精神的損害」にあたり、財産以外の損害賠償には「慰謝料」などがあります。配偶者が不倫をした場合、交通事故での人身被害、名誉毀損などが挙げられます。

財産以外の損害には、「無形的な損害」も含まれると広く解釈されています。例えば、法人そのものには意思は存在しませんから、名誉毀損をされたとしても精神的苦痛を感じることはありません。しかし、それによって法人の信用が毀損されたことには違いありません。こういったことを踏まえて、精神的苦痛を感じないであろうとされる法人や、精神的苦痛というものを理解できない幼児などであっても、不法行為によって710条の対象となる損害が発生すると解釈されています。

710条について意見が分かれているのが、「生命を侵害する不法行為の場合に、慰謝料請求権は相続の対象となるか」という点です。

①相続肯定説
生命侵害の場合でも、「被害者固有の慰謝料請求権が発生して、これが相続される」とする考え方です。その根拠として、下記の2点が挙げられています。

・不法行為と被害者死亡の間には、たとえ即死であっても一瞬の時間があり、その間に慰謝料請求権が発生していると考えられる
・慰謝料が相続されないとなると、被害者が障害を負った場合には慰謝料が発生するが、死亡した場合には慰謝料が発生せず、障害よりも死亡の方が損害賠償額が小さくなってしまう可能性がある

判例は、この相続肯定説を採用しています。

②相続否定説
こちらは慰謝料請求権が相続の対象とならないとする考え方です。相続否定説の根拠は、主に下記の2点です。

・民法711条に、生命侵害の場合に近親者に対して損害賠償すべきことを定める条文があるため、慰謝料請求権の相続をする必要がない
・被害者と生活関係上疎遠な相続人に慰謝料が支払われることになる可能性がある

 

2024年3月30日 ご執筆M様
(※ 解説内容は、執筆当時の情報をもとにしております)

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