民法 第715条第3項


(使用者等の責任) ※ 本条解説へ移動する
第715条第3項

 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

民法 第三編 第五章 不法行為 条文一覧




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以下、解説です。


【民法715条3項解説】

民法715条3項は、使用者責任に関する「求償権」について定めています。「求償権」とは、文字通り「償いを求める権利」です。
条文では、使用者が使用者責任に基づいて損害賠償を行った場合、使用者が、加害者である被用者に対して、賠償金の全部または一部の負担を求めることができる(求償権の行使を妨げない)としています。

使用者責任は、被害者が加害者の使用者に対しても損害賠償請求ができるとするものであり、加害者である被用者に責任がないとするものではありません。あくまで、加害者とその使用者が連帯して賠償する義務を負うとする「不真正連帯債務」にあたります。

とはいえ、現実問題として、従業員である加害者よりも、使用者である会社の方が高い支払い能力を持っているため、被害者側は使用者責任のある会社側に損害賠償請求をすることが多くなっています。
そこで、本来は不真正連帯債務として使用者と従業員が連帯して賠償すべきものであるため、民法715条3項で、使用者には被用者に対する求償権があるとしているのです。

では、求償権によって、使用者が被用者に対して、どの程度、請求できるのでしょうか。これについては、昭和51年の最高裁判所の判例で、「賠償した全額を請求できるわけではなく、信義則上相当な限度で行使できる」とされ、具体的な判断基準は設けられていません。

過去の判決では、求償権の行使が認められない、または、限定的にしか認められないケースがほとんどでした。昭和51年の判例では、従業員が起こした交通事故のケースで、会社側の求償権は、被害者に対して賠償した金額の1/4を限度とすると判断されました。
一方、平成28年の東京地方裁判所の判決など、従業員による顧客の金銭の横領や故意の加害行為といった事例では、会社が賠償した金額の全額について求償権を認めるケースも増えています。

なお、使用者責任が認められるケースで、被用者が被害者に損害賠償をしたことについて、被用者が使用者に対して求償を求める「逆求償」が認められた最高裁判所の判決も出ています。この逆求償は、民法に明確に定められたものではありませんが、求償権の考え方がベースになっているものだと言えるでしょう。

 

2023年10月2日 ご執筆M様
(※ 解説内容は、執筆当時の情報をもとにしております)

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