『ためなる』コラムその76:取締役を退任できない?~その②~

取締役を退任できない?~その②~


前の記事で、取締役を辞めたいのに、取締役会の定足数の縛りで辞められない…という方の相談の話をさせていただきました。
似たような相談は続くもので、またしても取締役を退任したいができない…というご相談がありました。

今回のケースは会社がもはや稼働していない状態のペーパーカンパニーなので、登記だけ残っている状態を解消したい、というご相談でした。

この場合、会社自体が動いていませんので、前回の場合とは異なり、この相談者の方が何らかの責任に問われる可能性は低いと思われます。しかしながら、自分の名前が登記簿に残っているのが気持ち悪いというのは十分に理解できます。

しかし、普通に考えれば、会社の代表取締役の住所は登記されているのですから、その住所に辞任届を提出して、登記を抹消してもらえばいいのではないか?と思うはずです。

今回のご相談の場合、当該住所に代表取締役が既に住んでおらず、その所在が不明で困っている、とのことでした。

弁護士に依頼することのメリットとしては、以前別の記事でご説明した職務上請求により、住民票や戸籍の附票が取れる、ということです。
これらを取得することにより、少なくとも最新の住民票上の住所を知ることが可能になります。
そうであれば、内容証明郵便を当該住所に送付し、依頼者が取締役を辞任したいこと、その上で抹消登記をしてほしいことを伝えられる可能性が出てきます。

もっとも、住民票上の住所にその人が住んでいるかは分かりません(住民票を異動していないケースも十二分に考えられます)。
この住所に実際に人がいて、依頼者の希望する手続きを取ってくれればいいのですが、最悪、届かなかったり無視される場合もあり得ます。

そういった場合、(本当にやるかどうかはともかくとして)会社を被告として提訴する方法があります。
この場合には、被告の住所地に何も存在していないので、まずは一旦被告の住所地宛に訴状を発送しますがこれは受け取られない、ということになります。そこで、付郵便という方法か、公示送達という方法のどちらかを取る可能性が高くなります。

裁判所からの訴状は、通常特別送達という方法によってなされるので、受領者(通常は被告)のサインが必要です。
その例外がこの二つの方法です。

付郵便は当該住所地の調査を行い、そこに被告が存在している旨(要はわざと受け取らない旨)の報告書を提出し、被告のサインを不要な形で訴状を送り付ける方法です。まずは、これを試すよう指示されることが多い方法といえます。

公示送達はそれでもなお、所在が不明な場合で、提訴後に裁判所の掲示板に提訴された旨が掲示され一定期間を経過すると、その訴状が被告に届いたものとみなされる制度です。
いずれの場合であっても通常訴訟の手続に乗って後は判断されることになります。

今回の場合はまず、内容証明を送付することになりましたが…どうなるか先行きは読めない事案です。

 

2024年4月2日 ご執筆c様
(※ 掲載内容は、執筆当時の情報をもとにしております)

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