『ためなる』コラムその45:職務上請求の使い方

職務上請求の使い方


弁護士をはじめとする一部の士業は、それぞれの法律に基づき、戸籍や住民票等を取得することができます。
これを職務上請求といいます(正直に言うと、私は他の士業の先生がどういった形で請求できるのかは詳しくありませんので、以下はあくまで弁護士が行う職務上請求について述べさせていただきます)。

本来、戸籍や住民票は個人情報の最たるものです。これが自由に第三者に取得できる、ということになると重大なプライバシー侵害になります。
この重大な個人情報の取得が本人でも代理人でもない弁護士に認められているのは、住所がわからないとそもそも交渉・訴訟の提起ができなかったり、戸籍を取得することができないとなると、特に相続において問題が生じる(例えば、依頼者の言い分だけを聞いて、相続人を特定してしまうと、相続人に漏れがあったり、先日の記事に記載した相続放棄の問題があったりする、といった例が分かりやすいでしょうか。)ことがあるからです。

たまに、ご相談を受ける際に、依頼者の方から「弁護士の先生って住民票とれるんですよね!?●●氏の居場所を突き止めたいのでその調査を依頼させてください。」といったご相談を受けることがあります。

しかし、このご依頼を受けることは弁護士としてはできません。むしろ、懲戒請求をされてしまう可能性のある位の行為、ということになります。

どういうことかと言いますと、上記の相談者の方のご依頼があくまで「調査」になっている点が問題なのです。
上記の通り、本来住民票や戸籍の取得は重大なプライバシー侵害を伴う行為です(そのため、本人や代理人でないと区役所・市役所等では申請ができません)。そのため、弁護士が取得する場合は弁護士の業務と関連していないと取得ができない、ということになっているのです。さらに言えば、住民票そのものや戸籍そのものを依頼者に見せることも制限されています。

「調査」は弁護士の業務ではありません。「交渉」や「訴訟」ということであれば、弁護士の業務になりますので、そこまでご依頼をいただけないと、職務上請求はできない、ということになります。

上記の質問者の方のように、この職務上請求の使い方を単に「弁護士は住民票や戸籍が取れる!」という形に勘違いされている方が少なくありません。
確かに、職務上請求という手段はありますが、上記の制度趣旨は依頼される際にご理解はいただく必要があります。
むしろ、調査のための職務上請求を受けてしまう弁護士だとしたら、依頼される際に一歩踏みとどまって考えてみる必要があるかもしれませんね

 

2022年11月28日 ご執筆c様
(※ 掲載内容は、執筆当時の情報をもとにしております)

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