推定無罪の原則~刑事事件で有罪になる場合とは~
先日、ある株式会社の代表取締役の方がご相談にいらっしゃいました。
他の取締役とのそりが合わず、ご本人も代表取締役とはいえ、株は有していないいわゆる雇われ社長であることから、代表取締役・取締役を辞任したいとのことで、ご相談にいらっしゃったのです。
ちょっと法律、特に民法をかじったことのある方なら「?」となるご相談内容ではないでしょうか。
取締役と株式会社の関係性は委任契約であるところ、委任契約については、どちらか一方からの意思表示により解約することができるはずだからです。
(株式会社側からの解任については会社法339条により、任期途中の解任の場合、取締役から株式会社に対して損害賠償を行うことができる場合もあります。)
もっとも、取締役会設置会社だと話が違ってきます。なぜなら会社法には以下のような規定が存在するからです。
具体的には会社法331条5項が
「取締役会設置会社においては、取締役は、三人以上でなければならない。」
と定めています。
つまり、取締役会設置会社であり、かつ、取締役が3名しか選任されていないとすると、取締役会の定足数を充たさない、ということになるため、本来であれば自由に辞任できるはずの取締役を辞任できない(かつ、登記も抹消できない)という事態が生じるのです。
今回の相談者の方はまさにそういった状態に置かれていました。
取締役を辞任したいができないとなると、取締役としての会社に対する善管注意義務や忠実義務を負い続けますし、場合によっては株主から責任追及をされたり(会社法423条等)、債権者からも責任追及をされてしまう(会社法429条等)恐れすらある状態にずっと置かれてしまうことになります。
取締役は株主総会によって選任・解任されます。
そして取締役会設置会社の場合、代表取締役は取締役会で通常は選任・解任されることになります。
そのため、取締役・代表取締役の辞任を取締役会・株主総会で承認してもらうことが必要です。また、上記の通り、取締役会設置会社である以上、3名以上の取締役が必要ですので、辞任しても3名以上になるよう新たな取締役を選任するか、定款を改定の上、取締役会非設置会社にしてもらう必要があります。
いずれにしても株主の協力は必要不可欠なのが原則です。
もっとも、相談者の方はいわゆる雇われ社長でしたので、株主との関係が良好ではありませんでした。
この場合、一時取締役選任の申立てを行うことも考えられますが、裁判所に対する申立てであるため、弁護士費用もそれなりに発生してしまいますし、選任された取締役(通常は弁護士が選任されます。)に対する報酬も一定程度予納する必要があるため、ある程度まとまった金額が必要です。
コストパフォーマンスの問題もあり、とりあえず、選択肢を提示することしかできませんでしたが、無事に解決されるといいのですが…。
2024年3月26日 ご執筆c様
(※ 掲載内容は、執筆当時の情報をもとにしております)