第96条第1項 【※ 本条解説へ移動する】
この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
日本国憲法 第九章 改正 条文一覧
以下、解説です。
【日本国憲法96条1項解説】
憲法はすべての法律の基準となる最も重要な法律であり、改正にあたっても厳格な要件が定められている必要があります。憲法96条1項は、日本国憲法の改正手続きについて定めたものです。
憲法改正手続きは、次のような流れで進められます。
①憲法改正案の発案
憲法改正の原案を出すことができるのは国会議員であり、衆議院議員100名以上の賛成または参議院議員50名以上の賛成で原案の発議ができます。これは国会法に定められている規定です。
②両議院での審議
憲法改正原案が提出されると、衆議院・参議院のそれぞれで、憲法審査会で審査を経て、本会議で議決を取ります。このとき、それぞれの総議員の3分の2以上の賛成があれば可決となります。
③憲法改正の発議と国民投票
衆議院・参議院の両方で憲法改正原案が可決されると、国会は国民に対して憲法改正の発議を行い、国民に憲法改正の是非を問うために国民投票を実施します。
国民投票は、憲法改正の発議後60~180日以内に実施され、投票総数の過半数の賛成をもって国民の承認があったものとされます。なお、過半数という基準は、憲法ではなく、「日本国憲法の改正手続きに関する法律」に定められています。
承認後、内閣総理大臣が、憲法改正の手続きを行います。
憲法改正は、このような手続きで行われますが、通常の法案などと比べると、改正承認までのハードルが非常に高いことがわかります。
法案の場合は、各議院で、定足数である3分の1以上の出席があれば審議することができ、議決を取る際も「出席議員の過半数の賛成」で可決となります。極端な場合ですが、定足数ちょうどの出席で、ギリギリ過半数で可決した場合は、総議員の6分の1を超える議員の賛成で法案が成立することになります。
両議院で法案の可否が分かれた場合に衆議院が再可決をすることもできますが、その場合でも、出席議員の3分の2以上の賛成で再可決されます。
これらと比べると、国政の根幹にあたる憲法の改正がいかに困難かわかるのではないでしょうか。
なお、2024年2月現在、憲法改正について議論されている中で、憲法改正手続きのルール変更も検討されています。その内容は、憲法改正の発議にあたっての国会での可決条件を、総議員の「3分の2以上の賛成」から「過半数の賛成」に変えるというものです。
その他に、憲法改正の手続きに関して、憲法以外の法律で定められている部分を憲法の中に明記するという内容も含まれています。
2024年2月12日 ご執筆M様
(※ 解説内容は、執筆当時の情報をもとにしております)