第25条第1項 【※ 本条解説へ移動する】
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
日本国憲法 第三章 国民の権利及び義務 条文一覧
以下、解説です。
【日本国憲法25条解説】
憲法25条は、生存権について定めた条文です。「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」という文言は、日本国憲法で最も有名なもののひとつとも言えるでしょう。
生存権は基本的人権の中でも「社会権」に属するもので、国民には人間らしく生活を送る権利があるとしています。1項で国民にその権利があることを示し、2項では国家が「社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と定めています。
国家は、国民の生存権を保障するために、さまざまな法律や規制を定めています。健康保険や年金制度、生活保護、飲食店に対する食品衛生など、多くの仕組みやルールを作り、人間らしい生活が送れる基盤を作っています。
ただ、この生存権をめぐり、よく議論になるのが、憲法25条に定める生存権がどこまで保障されるのかという点です。言い換えれば、法的権利性があるのかという点です。法的権利性があるとすると、国民は国家に対して「生存権が保障されるよう、具体的な措置を講ずることを請求できる権利がある」ということになります。
この点について、3つの考え方に分類することができます。
① プログラム規定説
憲法25条は、国民に法的権利性を認めるものではなく、国家に努力することを要求しているものであるという考え方です。法的権利があるわけではないため、国民が国家に対して、生存権を保障する法律を作るように求められる権利はないと考えられます。
② 抽象的権利説
憲法25条は国民に法的権利性を認めるものであるが、訴えを起こせるかどうかという点については「具体的な法律があった場合に限られる」とする考え方です。「生存権に違反している」として訴訟を起こすことはできず、「生活保護法に違反している」と具体的な法律についてであれば訴えを起こす権利があるとされます。
③ 具体的権利説
憲法25条に定める生存権は、憲法が保障する具体的な権利であるという考え方です。そのため、法律に定められていないことでも生存権が侵害されていると訴えを起こすことができるとされます。
これら3つの考え方ですが、昭和23年の食糧管理法違反事件では、プログラム規定説による判決が出されました。その後、昭和42年の朝日訴訟では、プログラム規定説を基本にしながらも、部分的に抽象的権利説についても述べられました。昭和57年の堀木訴訟においては、抽象的権利説をベースとした考え方によって判決が出されています。
また、法学者の間でも抽象的権利説が通説となっています。
2023年12月23日 ご執筆M様
(※ 解説内容は、執筆当時の情報をもとにしております)