日本国憲法 第21条第2項


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 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

日本国憲法 第三章 国民の権利及び義務 条文一覧






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以下、解説です。


【日本国憲法21条2項解説】

憲法21条2項は、検閲の禁止と通信の秘密を保障することを定めています。本条文では、検閲の禁止について、検閲に該当するか、検閲と似たものである事前抑制が表現の自由を侵害するものなのかといった論点で、何度も取り上げられています。

昭和59年の判例である「札幌税関検査事件」は、税関検査によって輸入しようとしていた表現物が輸入できなかったことについて、検閲の禁止にあたるかどうかが争われました。その際、最高裁判所は、検閲を次の6つの要件を満たすものと定義しました。

「①…行政権が主体となって、②…思想内容等の表現物を対象とし、③…表現物の一部または全部の発表を禁止する目的で、④…対象とされる表現物を一般的・網羅的に、⑤…発表前に審査したうえ、⑥…不適当と認めるものの発表を禁止すること」

なお、この事件は、上記の⑤と⑥を満たしていないため、検閲にはあたらないと判断されました。

検閲に関するもう1つの有名な事件が、平成5年の判例である「第一次家永教科書事件」です。この事件では、家永氏らが執筆した書籍が教科書検定で不合格とされたことが検閲の禁止に違反するものかどうかについて争われました。
最高裁判所は、教科書検定について、「教科書として採用するかどうかの判断にすぎず、一般図書としての発行を妨げる目的ではなく、発表禁止目的や発表前審査のための検定ではないため検閲にあたらない」という判断を下しています。

検閲と似たものに、「事前抑制」があります。なお、事前抑制は憲法21条1項の表現の自由と関連することですが、検閲と合わせて議論されることが多いため、ここで取り上げています。
事前抑制は、昭和61年の判例である「北方ジャーナル事件」で争われました。この判例において、事前抑制は「検閲とは異なり、司法権や行政権などの公権力によって行われるもので、例外的に認められる場合もある」としています。
この事件では、裁判所が仮処分を出し、雑誌の出版を事前に差し止めたのですが、行政権ではない裁判所が行ったため、検閲にはあたらないとされました。また、私人間の紛争について、当事者の申請に基づいて裁判所が審理したうえで、保全されるべき権利があると判断して事前抑制をしたと判断しています。
ただし、事前抑制も表現の自由の範囲内で、「厳格かつ明確な要件のもとにおいてのみ許容されうるもの」とし、「例外的に認められる場合もあること」を強調しています。

最後に、通信の秘密ですが、これは個人間の通信の秘匿を保障するものです。通信の範囲は広くとらえられており、封書やはがきだけでなく、電話やメールなども含むものと解釈されています。

 

2023年11月11日 ご執筆M様
(※ 解説内容は、執筆当時の情報をもとにしております)

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