パワーハラスメントにおける会社の責任について
ジャニーズの性加害問題に続き、今度は宝塚歌劇団の上下関係におけるハラスメントが話題になっています。
今回の件では25歳の劇団員の方が自死するという悲惨な結果を迎えてしまいました。
先日の劇団側の会見では、この方の自死について過重労働の存在は認めたものの、遺族側が主張しているハラスメント、特にパワーハラスメントについては認められなかった、と結論付けたことが話題になっています。
この会見の評価については、様々なメディアで今後議論されることになると思いますので、この記事ではパワーハラスメントにおける会社の責任について説明したいと思います(過重労働についても別途説明する記事をアップできればと思います)。
2022年4月からはいわゆるパワハラ防止法が施行され、パワハラに関する会社(企業)の責任がより一層明確化されました。
パワハラ防止法ではパワーハラスメントについて「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」と定義しています。
今回の宝塚歌劇団の例で言えば(劇団側はその存在を否定していますが)歌劇団という「職場」において、上級生・下級生という「優越的な関係を背景」としたウソつき野郎という「言動」について、業務上必要かつ相当とは言えないのでパワーハラスメントがあった、という認定になると思います。
パワーハラスメントによって損害が生じた場合、被害者側はまず、実際に当該パワーハラスメントを行った人物に対して不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求を行うことができます。
従前は、企業(今回で言えば宝塚歌劇団=阪急・阪神ホールディングスということになるのでしょう)に対しては、安全配慮義務違反等があれば使用者責任(民法715条)または企業そのものへの不法行為責任(民法709条)あるいは企業への債務不履行責任(民法415条)を問う、という形でした。
しかしパワハラ防止法の施行により企業の責任として、労働者が働きやすい職場環境を維持する義務の一環として、パワーハラスメントの防止措置が明文化され、これを実施していない以上、企業は債務不履行責任あるいは不法行為責任を負うとされ、被害者側の立証責任が緩和された=企業への責任追及が容易になりました。
このように、パワーハラスメントは行った本人だけが責任を負うことはもちろん、企業にも未然に防ぐ義務が課せられており、場合によっては責任追及がされることもあります。
今回の事例は閉鎖的な空間で行われ、かつ、一応の調査報告書においてパワーハラスメントやいじめが存在していなかった、との認定がなされています。
もっとも、OGや外部からの告発が相次ぎそうな気配もあります。
今後の経緯を見守りつつ、企業経営者の方は人のふり見て我がふり直せではないですが、より一層、パワーハラスメントの発生を未然に防ぐ措置をとることが求められます。
2023年11月15日 ご執筆c様
(※ 掲載内容は、執筆当時の情報をもとにしております)