『ためなる』コラムその67:破産事件には依頼者の協力が必要

破産事件には依頼者の協力が必要


先日、破産事件のご相談をいただき、受任することになりました。
破産事件は、裁判所への申立て⇒免責決定となれば、晴れて(債権者からすれば全く逆の事情ということになりますが)それまでに負っていた債務(端的に言えば借金)が自然債務となり、債権者側は取立てを行うことができなくなります(債務者が任意に返すことは可能ですが、まぁわざわざ破産してまで、返済を行う債務者はいないと思います)。

以前、別の記事で依頼者との信頼関係がどの事件においても大事だ、という話をしました。
もちろん、破産事件でも同様です。
しかし、今回の依頼者の方は「弁護士に依頼したのだからもう大丈夫!」という考えを持たれてしまったのか、受任後、中々打合せができず、電話にも出ない状態に陥ってしまいました。

確かに、弁護士が破産申立ての代理人となり、債権者に対して受任した旨の連絡をすると、申立人本人(今回でいう依頼者の方)に債権者からの連絡(主として取立て)が法律事務所に行くようになるので、気が楽になる=解放されたと思う、というのは理解できなくはありません。
しかし上記の通り、本当の意味で債務から解放されるのは裁判所において免責決定が出た時です(破産開始決定の時でもありません)。
そして、特に申立てに際しては依頼者の方の協力が必要です。
キャッシュフローの流れだったり、債権者の整理であったり、返済の状況であったり、自己破産しなければならない具体的な理由であったりと、裁判所に提出しなければならない資料が破産事件は多いのです。
そして、それらの資料の作成については、依頼者の方の(申立て直前の)生活の実情を記載する必要があるため、打合せが必須といえます。

今回の依頼者の方は、上記の推測が正しいのかは分かりませんが、受任後、打合せをしたいといっても「もう弁護士に任せたから」と言ったり、「自己破産のことは考えたくない」等と言って、中々打合せが実現しませんでした。

委任状を取得してからあまり時間が経ちすぎてしまうと、いざ申立てをした際に、申立までの時間がかかりすぎている点について、財産隠しをしていたのではないか、といった余計な詮索を受けることにもつながりかねません。

私としては、近いタイミングで打ち合わせができないのであれば、着手金はお返しするので辞任させてほしい旨を述べ(半ば脅迫かもしれませんが…笑)、何とか打合せを実現し、申立をするに至りました(免責決定も得ることができました)。

申立てに際して代理人が果たす役割は重要ですし、そうであるからこそ弁護士費用は発生します。しかし、代理人は代理人であって本人ではありません。

どの事件でもそれは言えることですが、特に破産事件については依頼者の方が果たす役割も重要ですし、免責決定が出るまでは浮かれないでほしいということを知っていただけたらと思います

 

2023年11月8日 ご執筆c様
(※ 掲載内容は、執筆当時の情報をもとにしております)

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