『ためなる』コラムその78:家族なのに相続できない?

家族なのに相続できない?


『家族だし、相続したいが法律上相続できない!?そんなことがあるのでしょうか?』
と言われると…あり得ます。
今回の相談者の方がまさにその状態でした。

事情としては、相談者の方のお母さんがずいぶん前に亡くなり、そのお母さんの所有していた土地・建物を相続したい、というものでした。

それだけだと、単に登記を忘れていただけでは?となるのですが、そのお母さんは再婚しており、相談者の方の義理の父親がその土地・建物に住んでいたというのです。その義理の父親が亡くなったので、自分が登記しても問題ないのではないか?というのが今回の相談の概要でした。

一見話はシンプルに思えたのですが、登記簿をネットで取得してみると、その土地も建物も義理のお父さんの名義で登記がなされており、その登記原因も母親からの「相続」となっていました。
よくよく話を聞いてみると、相談者の母親は現金や預貯金については相談者に、今回問題となる土地・建物については義理の父親にという遺言があり、その通りに相続手続したというのです。

さぁ、こうなると話が違ってきます。
義理の父親との間で、養子縁組がなされていない限り、法定相続分は依頼者の方には発生しません。
今回の場合、その指摘をファイナンシャルプランナーの方から受けていたようで、相談者の方は義理の父親との養子縁組または遺言の相談をしていたそうですが、いずれも実現する前に義理のお義父さんが亡くなってしまった、とのことでした。

そうすると、本来であれば相談者の方は法定相続人ではなく、義理のお父さんの法定相続人がその土地と建物を相続する、ということになります。
しかし、その義理のお父さんには相続人がいませんでした。
この場合、究極的には国にその土地と建物は帰属してしまうことになります。

それを防ぐ可能性があるのが、相続財産清算人の申立てです(従前は相続財産管理人と呼ばれていましたが2023年4月~名称が変更になっています。役割自体は大きくは変わりません)。

この相続財産清算人について、自身が利害関係人として申立を行い、かつ、特別縁故者として相続財産の相続を求めていくことになります。

もっとも、この特別縁故者の申立てのハードルは低くはないのが実情です。
特別縁故者というのは、法定相続人ではないものの、被相続人と特別な関係にあった人のことを意味します。
具体的には、被相続人と生計を同じくしていた人(例えば、内縁の妻や事実上の養子がこれに該当します)、あるいは、被相続人の療養介護をしていた人等がこれに該当する可能性があります。いうまでもないことですが、最終的な判断は家庭裁判所が行います。

今回の相談者の方の場合、この特別縁故者に該当する事由があるとは言い切れないように思います。また、仮に相続できたとしても相続税が発生することも考慮に入れなければなりません。

嘘のような本当の話ですが、こういう話も少なからずあるということですね…。

 

2024年5月28日 ご執筆c様
(※ 掲載内容は、執筆当時の情報をもとにしております)

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