社外役員の責任と役割
以前、このコラムでも顧問弁護士について説明したことがありました。
顧問弁護士は気軽に相談できる法律専門家、といったイメージですが、弁護士をしていると、社外取締役や社外監査役といったオファーを受けることもあります。
特に上場準備中の会社だと、会社法上、公開会社になることによって社外役員を選任の上、取締役会や監査役会を設置したりする必要が出てくるので、このタイミングで弁護士を入れることが多いといえます。
顧問弁護士と社外役員は昔は兼ねることができたのですが、今は望ましくない、とされています。
それは、顧問弁護士と社外役員の立場の違いにあります。
社外監査役・社外取締役の役割もそれぞれ異なるのですが、(字数の関係もあるので)それは別の機会にご説明しようと思います。
先ほども書いたように、顧問弁護士はあくまで会社における相談者的な立場です。代表取締役をはじめ、会社の利益を最大化するために法務的な面から協力することになります。
そして、顧問弁護士のアドバイスに会社が拘束されることもありません。法的にグレーという見解を顧問弁護士が述べたとしても、ビジネスジャッジとして、その事業を行う、ということは十分にあり得る話です。
そのため、株主や取引相手から責任追及をされることもありません(会社と顧問弁護士の間でトラブルになることはあり得ますが)。
これに対し、社外役員は、会社の利益の最大化と共に、コンプライアンス維持もその職務とされています。
そのため、代表取締役をはじめとする、社内の決定について、監視する役割も担うことになります。そのため、取締役会や監査役会において社外役員には積極的な発言が求められますし、場合によっては、会社が決定しようとしている事項に強く異議を唱えなければなりません。
会社法423条や429条が株主や取引相手等の第三者からの会社役員の任務懈怠についての責任追及を認めているのもその趣旨です。
そういった意味では、社外役員は顧問弁護士よりも責任が重い、ということになるでしょう。
仮に社外役員に就任する場合、いくつかの防御方法があります。
まずは、取締役会や監査役会での積極的な発言をしっかりと議事録に残しておくことです。最終的には裁判所の判断にはなりますが、これにより当該役員の任務懈怠がない、と判断される可能性が高くなります。
また、社外役員就任時に、責任限定契約を締結しておくのも一つの方法です。
当該役員としては、万が一、責任追及されたときにその限度額を定めることができます。
会社側からすると、いざ損害賠償請求をされたときに、当該役員の責任追及がしにくくなる側面はあるものの、これを付すことにより社外役員候補を探しやすくなる、というメリットもある契約です。
社外役員に就任するのは弁護士とは限りません。
いざ就任するときにはその責任をしっかりと意識する必要があります。
2022年2月8日 ご執筆c様
(※ 掲載内容は、執筆当時の情報をもとにしております)