『ためなる』コラムその32:刑事告訴はそう簡単ではありません

刑事告訴はそう簡単ではありません


最近(といっても一時期ほどの勢いはないように思いますが…)、芸能人の実情を暴露するYouTubeアカウントが作成され、話題になりました。
その際、暴露された側の芸能人が事務所を通じてコメントを出した際に「刑事告訴を含む法的措置を検討する」といった趣旨のコメントを出していたかと思います。

この件に限らず、芸能事務所が週刊誌などに対して同様のコメントを出しているのを見かけることがあると思います。

そうすると、刑事告訴は一見、一般的な手段であり、簡単にできるような印象を受ける方も少なくないと思います。

ところが、刑事告訴はそう簡単ではありません。
(もちろん例外はあると思いますが)基本的に弁護士に頼む方が無難です。
なぜなら、刑事訴訟法上、刑事告訴が受理されると、検察・警察は捜査を開始しなければなりません(被害届はあくまで犯罪があったことを検察・警察に知らせるだけで、捜査を開始しなければならない、というものではありません)。
捜査を開始する、ということは被疑者の取調べや場合によっては家宅捜索等、人権侵害が発生する可能性があります。そのため、検察・警察としても冤罪を生み出すわけにはいかず、刑事告訴の受理についてはかなり慎重になるんだろうと思います。

告訴状の作成だけでなく、種々の証拠の作成の上、警察署に相談に行き、警察官から、証拠の補充や場合によっては被害者の方を連れて行って、事情の説明→調書の作成等も行う必要があります。
もちろん、並行して告訴状についても修正を加える必要があります。
そもそも、告訴状も、簡単に作成できるものではなく、書式も整える必要があります。

こういった作業を複数回繰り返し、やっと受理してもらえる…というのが実情です。

そのため、弁護士としては、これを弁護士に依頼せず、一般の方で作成・対応、証拠の収集等を行うのは非常にハードルが高いのではないかと思います。

弁護士で対応しても、(公訴時効の問題はあるものの)それなりの時間がかかる場合が多いです。実際に私も現状で、最初に警察署に相談に行ってから2年以上経過しているにも関わらず、刑事告訴を受理してもらえていない詐欺事件があります。
そのため、最初に述べた芸能事務所のコメントについても、後追いのコメント、具体的には「刑事告訴が受理され、捜査が行われております」といったものは、あまり目にしたことがありません。

また、刑事事件として受理してもらうために、民事訴訟を提起し、不法行為であることを裁判所に認定してもらうことも、刑事告訴を受理してもらうために有効です。裁判所が、犯罪とはいわなくても、不法行為=違法な行為であることを認定していることになりますので…。

このように、一言で刑事告訴をする、といっても、様々なハードルがあり、作戦も考える必要があります。

実際に犯罪の被害に遭ってしまい、刑事告訴するのであれば、実際に依頼するかどうかはともかく、弁護士に相談されることをお勧めします。

 

2022年5月9日 ご執筆c様
(※ 掲載内容は、執筆当時の情報をもとにしております)

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