(連帯債務者に対する履行の請求) 【※ 本条解説へ移動する】
第436条
債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。
民法 第三編 第一章 総則 条文一覧
以下、解説です。
【民法436条解説】
本条文は、連帯債務について規定しています。連帯債務者に対しては、債権者はどの連帯債務者に対しても、債務のすべてについての履行を請求することができます。連帯債務者間では、それぞれがどの程度の債務を負担するかという負担割合が定められているものですが、債権者側からは、負担割合に制限なく、誰にでも自由に請求できます。
また、債務の性質が可分かどうかは、その性質上決せられます。
連帯債務が発生する要件については、①法令の規定、又は②当事者の意思表示によるとも規定しました。
①法令の規定
主なものは、共同不法行為者の責任(民法719条1項)や、日常の家事に関する債務の連帯責任(民法761条)です。
②当事者の意思表示
夫婦が住宅ローンを契約する場合など、当事者らの意思で連帯して債務を負担する契約をした場合です。
【履行の請求】
連帯債務者の一人に対して履行の請求をした場合、他の連帯債務者に対しても効力、つまり時効の完成猶予などの効力が及ぶのでしょうか。
この点について、現在の民法では規定がないため、連帯債務者の一人に対して請求をしても、他の連帯債務者に対しては何の効力もありません。
【時効】
連帯債務者の一人のために時効が完成したときは、その連帯債務者の負担部分については、他の連帯債務者もその負担部分の履行を免れるのでしょうか。
この点についても、現在の民法では規定がないため、連帯債務者の一人のために時効が完成したとしても、その他の連帯債務者の義務には変更はなく、債権者は債務全部についての履行の請求を残りの連帯債務者に対してすることができます。
上記2点については、民法441条の相対的効力の原則が適用されることになります。すなわち、債務者間で生じた問題については、互いに影響がないことが原則です。例外として、絶対的効力を持つ行為については、民法438条、439条1項、440条に規定されています。
【連帯保証との違い】
連帯債務では、債務者らそれぞれが債務者本人であるため対等な関係です。主債務者と連帯保証人が主従関係にある連帯保証債務とは異なります。連帯債務は対等な関係であるからこそ、債務者それぞれに生じた事由について、原則として相対的な効力しか持ちません。反対に、連帯保証の場合には、主債務者に生じた事由について、連帯保証人にも効力が生じ、連帯保証人に生じた事由については、主債務者に影響が及ばないのが原則というような関係となります。
2022年5月5日 ご執筆U様
(※ 解説内容は、執筆当時の情報をもとにしております)