『ためなる』コラムその33:仮差押えの使い方

仮差押えの使い方


裁判所に対する手続きの中に『仮差押え』というものがあります。
もちろん、弁護士に依頼していただいて裁判所に申し立てるのが普通です。
仮差押えは訴訟等で財産の回収を図る際に、相手方(訴訟になれば被告になる人)の預金口座が判明している場合、当該預金口座からの財産の流出や意図的な財産の持ち出しを防ぐために、その財産を動かせなくする、という手法です。

実際には裁判所に対して仮差押えを申立て、裁判所がその申立てに理由があると判断した場合に、相手方の意見を一切踏まえずに出す決定、ということになります。
この点について、相手方から保全異義の申立てを行い、当該仮差押えが適切だったかどうかを審理することもできます(このあたりについては別の記事でまたお話させていただければと思います)。

ただし、この手続だけでは、その預金口座から強制的に金銭を取り立てることはできません(相手方の財産の保全があくまで本来の目的だからです)。

もっとも、この預金口座の仮差押えを別の用途で使う場合があり得ます。

相手方にプレッシャーをかけ、訴訟を早期に和解に持ち込む、というものです。法の目的からすると、かなりイレギュラーなやり方ですが、特に相手方が企業の場合は、効果があることがあります。
具体的に言えば、金融機関から法人が融資を受けている場合です。
多くの場合、金融機関との契約書の中で、「期限の利益の喪失」という条項があり、仮差押え等の処分が当該法人又は連帯保証人(多くの場合は代表取締役だと思いますが)に対してなされた場合、当該法人が期限の利益を喪失する、と定められています。

期限の利益を喪失する、というのは法律用語なのでわかりにくいと思いますが、通常、金融機関から法人(会社)が運転資金等について融資を受ける場合、何十年単位という長期にわたる分割で返済をしていくことが多いといえます。
ところが、期限の利益を喪失すると、その分割ができなくなり、残っている残元本に利息・遅延損害金を加えた金額を一括で返済しなければならない、という状況に陥ります。

実際のところは金融機関と当該法人の関係性にもよるので必ずしもその請求がすぐに法人に対してなされる、ということは言い切れませんが、そういう状況下にあるということは法人の経営にとって、非常に大きなプレッシャーになるということは想像に難くないのではないかと思います。

ある意味いやがらせ的な要素を含んではいますが、訴訟提起する際に、早期解決、かつ自身に有利な和解を求めるのであれば、一考に値する方法だと思います(法の趣旨には沿っていませんが…)。

いずれにしても、早期解決、及びどのように回収を図るかについて弁護士に相談する価値のある一例と言えそうです。

 

2022年5月31日 ご執筆c様
(※ 掲載内容は、執筆当時の情報をもとにしております)

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