『ためなる』コラムその54:法的根拠があるかないか~その5~

法的根拠があるかないか~その5~


先日、ある顧問先の会社からご相談を受けました。

ご相談内容としては…
● ある従業員が会社を辞めた。
● 会社としては、辞職として処理したいが、どうやら辞める前に、会社の社長(代表取締役)と話をして、その際に「成果が出ていない」等とだいぶ詰められたようだ。
● その後、先方に代理人が就き、解雇無効を主張され、解決金(賃金の1年相当分)の提案をされている。
というものでした。

私としては、当該従業員と社長の話合いの内容が重要ではないかと思いましたので、取り急ぎ社長との面談をセッティングし、お話を伺うことにしました。

実際にお話を伺ったところ、私の感触としては従業員の方は色々と詰問された結果「辞めます」と言わざるを得なかったのではないか、というものでした。
そうすると、今回の辞職が実質的に解雇と評価され、解雇権濫用法理(労働契約法16条)が適用される結果、当該解雇が無効となり復職させなければいけなかったり、場合によっては定年分までの賃料相当額の損害賠償請求を受ける可能性すらある旨をご説明いたしました。

その際、社長がおっしゃっていたのが
① 成果が出ていないんだから仮に解雇と評価されるとしても違法になるのはおかしいのではないか。
② 能力不足の場合解雇できるといった文献も読んだことがある。
というものでした。

①については、使用者側の弁護士としてはよく耳にする意見であり、人を雇用する側としてはごもっともな意見だとは思います。
もっとも、長期雇用が前提となっている日本社会においては、会社が従業員を育てるという意識が未だ残っているところであり、能力不足だけの解雇は違法となるのが判例ですので、この社長のご主張は法的根拠がない、ということになります。

②について、実際にそのホームページを拝見しましたが、同ホームぺージはあくまで専門性や経験を重視した雇用の場合(スペシャリストを雇用したような場合)の解説であり、一般的な従業員の雇用には当てはまらないものでした。
そのため、この点についても残念ながら社長のご見解は法的根拠がない、と言わざるを得ないものでした。

そのため、本来であれば退職勧奨をすべきだった(退職勧奨についてはどこかのタイミングで記事にしようと思います)、という説明を差し上げた上で、敢えて復帰させる旨の提案をしてはどうか、とお話しました。

恐らくですが(私の性格が悪いのかもしれませんが)、当該従業員は会社への復帰ではなく、金銭的解決を望んでいると思いましたので、敢えて復帰させる方向で交渉することで、解決金の金額を下げられるのではないか、と考えたからです。

この件はまだ解決に至っていませんが、どのように依頼者にとってベターな解決を導くか、というのは弁護士にとっての至上命題ですが、法的根拠がない場合は色々と悩ましいなぁ…と思う一件でした

 

2023年4月12日 ご執筆c様
(※ 掲載内容は、執筆当時の情報をもとにしております)

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