判決を取った!でも…
以前、別の記事で、判決にするか和解にするか、といった内容のものを書かせていただきました。
そして、判決まで行くよりも交渉での和解や、訴訟上でも和解した方がメリットが大きい、といった話をさせていただいたかと思います。
今回は、せっかく判決を取ったのに…という判決までいってしまったケースのデメリットをご説明したいと思います。
例えば、貸金の返還請求で勝訴した場合、判決主文としては
「被告は金●●円を原告に対して支払え。」
「訴訟費用は被告の負担とする。」
といった形になります(ここにいう訴訟費用というのは、あくまで、裁判所に支払った印紙代や切手代(厳密には郵券代といいます。)を指します。弁護士費用などは含まれません。実はこの勘違いをされている方は少なくありません)
さて、この判決を得た場合、どのように現金を回収できるか、というのが勝訴した原告の最大の関心事のはずです。
この場合、差押えの手続を採ることになりますが、そのためには、被告の預金口座を分かっている必要があります。差押えの対象も無限定というわけではなく、勝訴した側が指定する必要があるためです。
一番簡単なのは不動産を被告が持っている場合(当該不動産を競売にかけて回収することが可能になります)ですが、中々そういった事例は少なく、仮に不動産を持っていたとしても銀行の抵当権がついていたりして、回収が困難なことが少なくありません。
当該口座が分からない場合、あるいはいざ差し押さえても空っぽの場合、実費だけがどんどんかさむことになります。
勝訴判決を持っていると、裁判所に対して情報取得の手続を採ることが可能になりますが、これも銀行名・支店名を把握しておく必要がありますし、1支店ごとに実費が発生してしまいます。
また、弁護士会を通じた照会も可能ですが、銀行によって、全店照会(すべての支店について被告の口座があるかないか)を行ってくれるかは対応が異なります(メガバンク(みずほ銀行・三菱UFJ銀行・三井住友銀行・ゆうちょ銀行)は応じてくれます)。ただし、この照会については手数料が割高になります。
相手方の賃金を差し押さえることも可能ですが、賃金についてはその25%ずつしか回収ができません(相手方の生活を保護する観点からです)。
また、取締役だったりするとそもそも賃金ではなく報酬であり、差押えができなかったり、被告が退職してしまうと、その後は差押えは功を奏さない、ということになってしまいます。
このように判決をとっても実際の回収には色々と実費が発生しますし、実際の回収が困難であることも少なくありません。
事件をどのように着地させるかは感情論だけではなく、冷静に判断する必要がありますし、専門家の意見に耳を傾ける必要もあるのではないかと思います。
2022年12月16日 ご執筆c様
(※ 掲載内容は、執筆当時の情報をもとにしております)