刑事事件における示談について
人が犯罪を犯し、逮捕された場合、身柄を開放してもらうタイミングは…
①勾留されない
②起訴されない
③保釈
の3パターンがあり得ます。
今回は保釈については特に触れませんが、弁護活動の一環としての示談について説明したいと思います。
逮捕された場合逮捕から72時間以内に当該被疑者を勾留するか否かを決定します。
この逮捕→勾留の72時間で身柄を釈放してもらうには、
・逮捕の理由がないこと
・逃亡の可能性がなく、証拠を隠滅する可能性がないこと
・示談を成立させ、被害届等を取り下げてもらうこと
これ以外にも可能性はあるかもしれませんが、こういった弁護活動を行うことが必要です。
逮捕の理由がない、というのは結果的に当該逮捕が誤認逮捕だったことになります。日本の警察の場合、(もちろん可能性がないとは言い切れませんが)何らかの理由や証拠に基づいて逮捕に至る場合が多いので、逮捕の理由がなく、釈放されるというパターンは少ないように思います。
逃亡の可能性、証拠の隠滅の可能性についても、この段階で検察官側の証拠構造が判明していることは極めて稀なので、なかなか難しいところがある…というのが実際に刑事弁護活動を行っている身としての感想です。
示談については例えば痴漢事件を思い浮かべればわかりやすいかもしれません。
弁護人としては被害者の方への連絡の許可を警察・検察にもらい、電話で交渉をします。
この場合、三日間の身体拘束であれば、勤務先に例えば有休といった説明で済むケースもありますし、不起訴となる可能性が高くなる(=前科とならない可能性が高くなる)という意味で、当該被疑者の方にとっては非常にメリットが大きい話になります。
しかし、その分、示談金額が比較的大きくなりがち、というデメリットもあります。
皆さんご存じかもしれませんが、刑事事件と民事事件は完全に別物です。
そのため、刑事事件の結論が出た後に民事事件の損害賠償が飛んでくる、ということも十分にあり得ます。
そのため、示談に際しては精算条項といって、「●●と●●は、本合意書に定めるもののほかなんらの債権・債務を有しないことを相互に確認する。」といった文言を入れ、刑事事件の手続の一環ではありますが、示談の中で民事事件についても併せて解決することがほとんどです。
そして金額は【勾留前の示談>起訴前の示談>起訴後の示談】となっていくことがほとんどといえます。弁護士としても、タイミングが後ろに行けば行くほど、実際の民事訴訟を見据えた金額しか提示できなくなるためです。
もっとも、(特に早期の場合の)示談金の相場は民事訴訟を基準にするとはいえ、あってないようなものであることも確かです。
万が一、逮捕され身体拘束され示談を望む場合には、当番弁護士あるいは私選で呼んだ弁護士に、ご自身の財産の状況を踏まえつつ、相談されるのがよいでしょう。
2022年3月23日 ご執筆c様
(※ 掲載内容は、執筆当時の情報をもとにしております)