『ためなる』コラムその35:真実と事実認定

真実と事実認定


「真実はいつも一つ!」
名探偵コナン君の有名なセリフですね。どこかで耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

コナン君は正しく、真実は確かに一つしかありません。
それを知っているのは当該真実を経験している当事者しかいません。

そして、裁判官も神様ではなく、ただの人です。
そのため、判決で認定されるのはあくまで事実であり、真実ではない、ということを理解する必要があります。

では、事実はどのように認定されるのか…というと、やはり証拠が重要になります。
例えば契約書のように、署名や押印がある場合であれば、その契約書の内容が事実であるという推定が働く、といったことが民事訴訟法にも記載されています。

証拠の中には人証、つまり尋問による結果も含まれますが、尋問の戦い方もやはり、証拠関係がどのような形になっているかで作戦が変わってくることになります。

このように、あくまで事実認定には客観的な証拠が大事、ということになります。ドラマのように尋問で一発逆転というのはほぼない(尋問前に裁判官が心象を固めていることが多い)ということは、訴訟を行う上では認識しておいた方がよいでしょう。

一般論として裁判における「753」という言葉があります。
真実(依頼者の方が経験した真実)を10とすると、依頼者側の弁護士はその真実のうち7を理解していることが多く、相手方の弁護士がこちら側の主張する真実のうち5を理解しており、裁判所は双方の主張から真実のうち3程度の認識で判決を作成する、というものです。

全体の3割の情報量で判決を書く裁判官の大変さを如実に表す言葉ともいえそうです。

そのため、弁護士に依頼の上、訴訟で事実認定を争う場合には、それ相応の客観的証拠を用意していただくことが非常に重要となります。

契約書等、双方あるいはどちらかの署名・押印がある書類が用意できるのであれば、それが事実認定の出発点となり、これを覆すのは容易ではありません。

身に覚えのない借用書のようなものや、「そういうつもりじゃなかった」というようなことを後から主張したとしても、当該証拠に署名や押印があり、その解釈として相手方の主張が合理的、と判断されるのであれば、その主張が通る可能性がそれなりに高い、ということには注意が必要です(真実がどうであれ、尋問だけで覆すのはかなり厳しいと言わざるを得ません)。

そのため、当事者の方からすると納得できない判決や、事実認定を前提とした和解を裁判所から勧められることもあり得ます。
もっとも、(和解については)客観的証拠、及び弁護士の経験則からして、その後の見通しを知った上で和解に応じるか応じないかは慎重かつ適切に判断する必要があります。
ご自身の経験・想いだけですと、特に金銭的な意味で不利益になる場合があるので注意が必要です

 

2022年6月27日 ご執筆c様
(※ 掲載内容は、執筆当時の情報をもとにしております)

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