『ためなる』コラムその38:最低賃金に関する雑感

最低賃金に関する雑感


法律問題とはちょっと違うかもしれませんが…
東京簡易裁判所・家庭裁判所・地方裁判所・高等裁判所は東京のいわゆる官庁街、霞が関にあります。

裁判所に道すがら、厚生労働省の前で、「最低賃金を1500円に!」「地域格差をなくせ!」といったデモというか集会のようなものを行われているのを目にすることが少なくありません。時にはビラを渡されたりもします。

確かに、日本の労働者の賃金に関しては最低賃金法という法律が定められており、地域、というか都道府県ごとに時給換算しての最低の賃金が定められています。
これは、あくまで労働者を保護するための法律です。
つまり、労働者と使用者の関係において、経済力の観点から圧倒的に優位にある使用者に対し、最低賃金以下の契約を無効とし、労働者の最低賃金を法律によって保障することで、労働者の生活を守ると共に、使用者に不当な搾取をさせないことを目的としている法律なのです。

そして具体的な最低賃金については
(地域別最低賃金の決定)
第10条 厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、一定の地域ごとに、中央最低賃金審議会又は地方最低賃金審議会(以下「最低賃金審議会」という。)の調査審議を求め、その意見を聴いて、地域別最低賃金の決定をしなければならない。
2 厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、前項の規定による最低賃金審議会の意見の提出があつた場合において、その意見により難いと認めるときは、理由を付して、最低賃金審議会に再審議を求めなければならない。

という形で都道府県ごとに基本的には年一回定められることとされています。
さて、冒頭の「最低賃金を一律1500円に!」という主張ですが、もちろん、不景気が長引く日本において、生活を豊かにしたい、という希望自体は理解できます。

しかし、最低賃金を例えば1500円とし、地域ごとの物価のレベルを考慮しないとすれば、そもそも企業による雇用が維持できなくなるのではないか?整理解雇もしやすくなり、結局のところ、職を失う可能性があるのではないか?という視点が欠けていないでしょうか。
同一労働同一賃金の観点からも非正規雇用や偽装請負(同一労働同一賃金や偽装請負については、そのうち、別の記事を書かせていただこうと思っています)が増えてしまうことも大いにあり得ます。
仮に、税金による補填を求めているのだとしたら、その財源も不明と言わざるを得ない…と個人的には思ってしまいます。

上記したようにあくまで最低賃金法は、労働者の生活を保護するための法律です。その保障の範囲を超えた保障は合理的な根拠(法的根拠)がなければただのわがままになりかねません。訴訟提起しても棄却されることになるのではないかと思います。
若干政治的な話かもしれませんが、問題提起してみたい事項です。

 

2022年8月8日 ご執筆c様
(※ 掲載内容は、執筆当時の情報をもとにしております)

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