『ためなる』コラムその72:人事評価のNG事項~賃金は勝手に変えられる?~

人事評価のNG事項~賃金は勝手に変えられる?~


先日、ご相談にいらっしゃった方の相談内容が、「給料を勝手に下げられたのだが、その分の差額の請求は会社に対してできるのか」というものでした。

この問題って実は多くの人が勘違いしていたりする問題です。
以前ご紹介した内定辞退と同じレベルで間違った知識が広まっている気がします)

会社は当たり前のことですが、従業員に対して賃金を支払います。
そして、その賃金は、会社の人事考課の結果により定まると思われている方が多いと思います。

実は、この説明は半分合っていますが、半分間違っています。
まず、人事考課の結果により基本給を下げることは基本的にできません。
何故なら、労働契約法8条には
「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。」
と定められています。
そのため、労働契約の根幹をなす、賃金については、合意なく引き下げることはできないのです(この条文からすると、賃金の引上げもできない、ということになりますが、引き上げの場合、同意しない労働者は皆無なので、問題にはならないでしょう)。
よって、人事考課によって一方的に賃金を引き下げるのは違法、ということになります。

ただし、例外があります。
就業規則で職位(簡単に言えば、業務のランク)が定められている場合には、労働者側にもルールが明確化されていることから、人事考課の結果によって職位が下がった場合の不利益について予測できる、という理由からこの場合(大手企業の場合は多くの場合この制度が採用されていると思います)には、人事考課の結果によって一方的な賃金の減額が可能です。

また、賞与(いわゆるボーナス)については、そもそも法律上に規定がありません。
そして、多くの企業の場合、賞与については就業規則または賃金規程で「会社の業績に応じて支給することがある」と定められているにとどまります。
そのため、(もちろん、特定の個人を狙い撃ちし、支給しないなどの例外的な場合は違法となりますが)支給の有無、支給の金額については会社側に広い裁量が与えられています。

また、賃金規程に規定されている手当についても、会社側が人事考課の結果、部長職から課長職に降格した場合に部長としての職務手当を支給しないといった形で一方的に減額することも可能です。
これも上記の就業規則の場合と同様にルールが明確化されており、労働者側に不利益が予測できるため、違法とはなりません。

今回の相談者の方は基本給、そして固定残業代が一方的に減額されていました。
上記の通り、基本給に関しては例外的な場合を除き、一方的な減給は違法です。
また、固定残業代についても雇用条件通知書に記載があり、労働契約の内容となっていることから、一方的な引き下げは認められないでしょう、という結論を述べ、相談は終了しました(受任するには、相談者の方の経済的利益が少なすぎたので、相談にとどめることにしました)。

当たり前だと思っていても、実は闘えることもある、といういい一例でした。

 

2024年1月25日 ご執筆c様
(※ 掲載内容は、執筆当時の情報をもとにしております)

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