『ためなる』コラムその40:刑事事件の示談について~その2~

刑事事件の示談について~その2~


以前、刑事事件における示談について、その時期や示談のポイントについて別の記事でご説明したかと思います。

最近、私が当番弁護士として出動し、被疑者国選事件として受任した事件でちょっと変わった経験をしたのでそのことを今回はお話したいと思います。

事件の内容自体は特に難しいものではなく、酒に酔った被疑者が飲食店の従業員を殴ってしまったという暴行被疑事件でした。

当番弁護士として警察署に出動し、初めて接見した際には、被疑者の方は酒に酔っていて全く事件の記憶がなく、認めることも否認することもできない…といったお話をされていましたが、会社への復帰を急ぎたい、という思いが強かったので、私としては「迷惑をかけた人がいるのであれば謝る。また、相応の金額をお支払いする。」という形で早期に示談した方がよいのではないか、というお話をさせていただき、実際にその方向で動くことでご了解を得ました。

警察官・検察官に聞くと、目撃者もいるようでしたので、公判で無罪にするのはなかなか厳しい事案と判断し、より一層早期の示談を求める旨、警察官・検察官に申し入れました。

その結果、弁護人から(=つまり、私から)の連絡であればOKとの返事をいただき(=被疑者との直接の接触はNG、刑事事件ではよくあることではあります。)、私から被害者の方に連絡して、示談の交渉をすることになりました。

勾留前に示談を成立させることはできませんでしたが、被害者の方の怪我の程度、被疑者の視力などを踏まえ
・被害者の方に対する一定の金銭の支払い
・被害者の方への謝罪
・被害者の方、及び事件現場への被疑者の接触禁止
・被害届の取下げ、及び被害者は被疑者に対する刑事処罰を求めない
といった内容の示談を勾留満期前に成立(=示談書に被害者の方の判子を得ることができました)させることができました。

そして、成立した示談書を検察官に提出の上、示談が成立している以上、被疑者を不起訴にすべきであるとの意見書も提出し、正直なところ、この被疑者についての弁護活動は全て終了したと思っていました。

ところが、翌日、検察官から電話があり「被害者の方と連絡が取れない。」とのお話をいただきました。私としては、十分に示談書の内容をご説明の上、署名・押印いただいていたのでその旨を検察官に説明したのですが検察官の立場からすると「起訴猶予で釈放するとなると、被害者が示談の内容をちゃんと理解しているか、特に被害届の取下げについて理解しているかを確認しないと、釈放できない。」とのことでした。

普段民事事件ばかりやっているからか、署名・押印のある契約書があるのであれば、民事訴訟法の規定により、当事者の意思が推定される、という考え方で考えてしまっていましたが、刑事事件だとより慎重になる必要があるということを勉強させられました。

そのあと、私から被害者の方に電話をかけ、検察官に連絡を入れるよう(入れないと示談金のお支払いも難しくなってしまう)伝えたのは言うまでもありません…。

 

2022年9月13日 ご執筆c様
(※ 掲載内容は、執筆当時の情報をもとにしております)

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