民法 第896条


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第896条

 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

民法 第五編 第三章 相続の効力 条文一覧




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以下、解説です。


【民法896条解説】

1.趣旨
この規定は、相続によって被相続人が主体であったすべての法律関係が相続人に承継されるという相続法の根本原理を示したものです。
相続法の解釈については、相続による権利は包括承継であることを示したこの規定を根本原理として行われます。

2.相続人に承継される「一切の権利義務」とは
相続が発生すると被相続人に属した一切の権利義務は相続人に承継されます。ここでは、相続の発生によって相続人に承継されるのか否かにつき争いのあるいくつかの権利義務関係について解説します。
●占有権
判例は、占有権の相続を認めています(最判昭和44年10月30日)。相続人は、占有者としての被相続人の地位もそのまま承継することになります。
そのうえで、相続人は、被相続人から相続した占有権を主張するだけでなく、自己固有の占有権を選択して主張することも可能です(最判昭和37年5月18日)。相続人は、被相続人の占有権を承継するとともに、自ら新たな占有を始めたと評価できるためです。
●無権代理人の地位
無権代理人と本人との間で相続が発生した場合の権利義務関係についても、判例と学説との間で争いがあります。
判例の立場では、無権代理人が本人を単独で相続した場合、本人が自ら法律行為をしたのと同様の法律上の地位を生じることとなり、追認を拒絶することはできないとされています(最判昭和40年6月18日)。ただし、共同相続の場合には、追認権は共同相続人に不可分に帰属するものとして、他の共同相続人全員の追認がない限り、無権代理行為は無権代理人の相続分に相当する部分においても当然に有効とはなりません(最判平成5年1月21日)。
一方で、本人が無権代理人を相続した場合については、本人が無権代理行為の追認を拒絶しても何ら信義則に反することはないため、無権代理行為は本人の相続によっても当然に有効となることはありません(最判昭和37年4月20日)。

3.相続人に承継されない「一身に専属したもの」とは
被相続人の一身に専属したもの(一身専属権)は、相続の発生によっても相続人に承継されません。一身専属権とは、被相続人だけが享受しうる権利や被相続人だけが負担すべき権利のことです。
一身専属権の例としては、死亡によって終了する委任契約上の権利義務や扶養請求権などが挙げられます。
ただし、扶養請求権については、扶養義務の内容が具体的に確定し履行期が到来したものについては、通常の金銭債権と同様に相続の対象となるので注意が必要です。

 

2022年9月26日 ご執筆T様
(※ 解説内容は、執筆当時の情報をもとにしております)

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