民法 第909条


(遺産の分割の効力) ※ 本条解説へ移動する
第909条

 遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

民法 第五編 第三章 相続の効力 条文一覧




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以下、解説です。


【民法909条解説】

1.本文について
(1)趣旨
909条の本文は、遺産分割の効力に遡及効を与えるものです。遡及効があることで、相続人は被相続人の死亡と同時に遺産を取得していたことになるため、遺産の散逸から相続人を保護することにつながります。

(2)遺産分割の効力
遺産分割の効力については、次の2つの考え方があります。
●宣言主義
相続の開始と同時に、各相続人は被相続人から財産を継承していたのであり、遺産分割は、その効力を宣言するものに過ぎないとする考え方です。
つまり、遺産分割によって権利変動が起こることはないとする考え方になります。
●移転主義
被相続人の財産は、遺産分割によって、遺産分割の時から各相続人の所有になるとする考え方です。この考え方では、遺産分割前の遺産は、各相続人の共有状態という形になります。

民法は、遺産分割に遡及効を与えているため、宣言主義の考え方によるものと言えます。

2.ただし書について
(1)趣旨
909条ただし書きの趣旨は、宣言主義を徹底すると、第三者の取引の安全が害されるため、遺産分割の遡及効により害される第三者の保護を図ることにあります。
909条は、本文によって宣言主義の考え方によることを明らかにしていますが、ただし書きの存在によって、事実上は移転主義によるのと変わらない結論となっています。

(2)「第三者」の意義
909条ただし書きは、遺産分割の遡及効によって害される第三者を保護するものです。そのため、「第三者」に該当するのは、相続開始後遺産分割前に取引関係に入った第三者に限られます。
「第三者」の例としては、相続人から遺産の持分を譲渡された者、担保に供された者、持分を差押えた債権者などが挙げられます。単に相続分を譲り受けただけの者は「第三者」には含まれません。
「第三者」として保護される者の主観的要件として善意・悪意は問われません。背信的悪意者でなければ、悪意者であっても、保護されます。
ただし、「第三者」は、他の相続人と対抗関係にはなりませんが、第三者として保護されるためには、権利保護要件としての登記を具備することが必要です。善意者であっても、登記がなければ保護されません。

遺産分割の場面で対抗要件としての登記が問題となるのは、遺産分割により法定相続分を超える財産を承継した相続人と、遺産分割後の第三者との関係です。
この場面では、相続人は、遺産分割によって登記をできる状態にあったと言えるため、第三者が先に登記をしてしまうと対抗できなくなってしまいます。

 

2022年11月11日 ご執筆T様
(※ 解説内容は、執筆当時の情報をもとにしております)

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