民法 第98条第1項


(公示による意思表示) ※ 本条解説へ移動する
第98条第1項

 意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示の方法によってすることができる。

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以下、解説です。


【民法98条1項解説】

民法98条は、意思表示をする相手方がどこにいるかわからなくなってしまった場合に備えて定められています。
意思表示について、民法は、意思表示の通知が相手方に到達することで効力が生じる「到達主義」を採用しています(民法97条1項)。そのため、相手方の行方が分からず、口頭でも郵便でも意思表示することができない場合、何もできなくなってしまいます。民法98条は、その救済措置として、「公示による意思表示」ができるようにしています。

公示による意思表示は例外的なルールですので、特定の条件を満たしている場合にのみ利用できます。それは、「相手方を知ることができない場合」または「相手方の所在を知ることができない場合」です。

「相手方を知ることができない場合」というのは、誰に意思表示をしてよいのかがわからない状態です。普通は「最初に契約したときの相手」に意思表示すればよいのですが、契約の相手方が亡くなっていたことが通知されておらず、相続人がわからなくて意思表示できないということもあるでしょう。
「相手方の所在を知ることができない場合」には、契約の相手方が行方をくらましてしまった場合や、事故や事件の加害者がいることは明らかだがその所在地がわからない場合などが当てはまります。

この2つの条件のいずれかに該当する場合、公示による意思表示を行うことができますが、その具体的な方法や効果については、民法98条2項以降に定められていますので、ここでは省略します。

最後に、公示による意思表示で注意しておくべきことがあります。それは、公示による意思表示ができると言っても、あくまで「意思表示ができるだけ」ということです。公示するだけであり、意思表示をするべき相手方を探して届けてくれるわけではありません。つまり、公示による意思表示ができても、その意思表示をすることで求めている結果が得られるわけではないのです。
民法98条は意思表示すべき相手方がわからない場合の救済措置ではありますが、それよりも重要なことは「万が一のことがあっても、相手方が誰で、どこにいるのかを把握できるようするなどの対策をしておくこと」です。契約書を締結する際、相手方が引っ越した場合や相続時には連絡先等を通知する義務をつけておいたり、相手方が所在不明になった場合には一方的な意思表示で契約解除できるようにしておいたりするなどの対策を事前に講じておくのも有効です。

 

2022年9月16日 ご執筆M様
(※ 解説内容は、執筆当時の情報をもとにしております)

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