『ためなる』コラムその58:法的根拠があるかないか~その6~

法的根拠があるかないか~その6~


以前、別の記事で不倫の慰謝料請求の際にはしっかりと証拠を用意する必要がある、といった話をしたことがあったかと思います。また、慰謝料請求の際には、男女の間で性行為がなされたことが基本的には必要である、ということも説明したかと思います。

今回のご相談者の方は、ちょっと特殊な相談をお持ちでした。

ご相談者の方は男性なのですが、ある日、飲み会に行ったところ、終電がなくなってしまい、同じ飲み会に参加していた女性の同僚(既婚者)とラブホテルには入ったものの、その先は何もしていない…にも関わらず、女性のご主人から慰謝料請求を受けている、という相談でした。パッと聞いた感じ、どこかの政治家や芸能人が使いそうな言い訳に聞こえてしまったのは事実です…(笑)

よく、判決では「経験則」という言葉が用いられます。
平たく言えば、普通に考えれば◎◎があれば●●ということになるでしょう、というものです(とはいえ、裁判官によってこの「経験則」には若干の違いがあるため、裁判官の異動に我々が敏感になることについては別の記事で触れた通りです)。

さて、男女がラブホテルに入り、一夜を共にした…となると、状況は限りなくクロ…ということはお分かりになるのではないかと思います。もちろん、不貞行為の立証責任は慰謝料を請求する側にありますが、ラブホテルで一晩を過ごしたという事実だけは争いようがありません。

私達も経験則上、今回のご相談者の方に対して「無傷で済む可能性は低い」とお伝えせざるを得なかった、というのが実情ではあります。もっとも、全く戦えないか、というとそんなことはないと思います。
上記の通り、あくまで不貞行為の立証責任は先方にあります。

こちらとしては、「ラブホテルには入ったとしても性交渉はしていない」という主張を行い、その証拠として、例えば二人の間のLINE等日常のやり取りが分かるもの、かつ、それぞれがそれぞれに対して好意をうかがわせる内容でないものを提示すれば、それなりに先方のハードルは上がるはずです。
このLINEのように、直接的に主張を基礎づけるものでなかったとしても、間接的に(経験則からすれば)主張を基礎づける事実を間接事実といい、訴訟の場においては、これも重要な証拠となり得ます。

今回の場合、この間接事実に関する証拠をどれくらい積み上げられるかによって、ご相談者の方の主張に法的根拠があるといえるか否か、が変わってくると思います。

第三者的には、どういった証拠をご相談者の方が用意でき、裁判所がどのように判断するのか、興味がある事案ではありましたが、やはりご相談者の方にとって有利な事案とは言えず、あくまで話合いで迷惑料程度の金銭の提示で終わらせるのが良いのではないか、というアドバイスになった事案でした

 

2023年6月21日 ご執筆c様
(※ 掲載内容は、執筆当時の情報をもとにしております)

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