(不当利得の返還義務) 【※ 本条解説へ移動する】
第703条
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
民法 第三編 第四章 不当利得 条文一覧
以下、解説です。
【民法703条解説】
民法703条は、不当利得の返還義務について定めています。不当利得とは「法律上権利がないにもかかわらず受け取った、他人の財産や労務によって受けた利益」のことです。
不当利得は、次の4つの要件を満たしている場合、返還請求をすることができます。
・他人の財産または労務によって利益を受けた
・他人に損失を及ぼした
・得た利益と他人に及ぼした損失に因果関係がある
・法律上の原因がない利益である
身近な例では、次のようなケースが不当利得にあたります。
・お店で商品を購入したが、お釣りを多く受け取った
・本来受け取るべきでないお金が、あやまって銀行口座に振り込まれていた
これらはいずれも、正当な理由なく利益を受け取っており、それにより相手に損失を及ぼしているため、不当利得と判断されます。
不当利得を得た側は、これらの要件を満たしている不当利得を返還する義務を負っていますが、返還する金額は「その利益の存する限度において」とされています。これは、「不当利得のある人のところに現在も残っている利益(現存利益)」という意味です。
ここで注意が必要なのが、返還すべき金額の限度は、現存する「利益」が基準になっているということです。手元に現金がなかったとしても、現存利益があるかどうかで判断されます。
例えば、不当利得を生活費や借金の返済に充てた場合は、それによって「自らの財産の減少を免れたという利益」が残っていることになり、現存利益があるとみなされます。一方で、ギャンブルや浪費によって失われた分は現存利益がなくなっており、その分について返還義務を負わなくてよいことになります。
なお、民法703条に定めているのは、不当利得を得た側が善意だった場合についてです。悪意、つまり、不当利得であることを知ったうえで受け取った場合については、民法704条に定められています。
不当利得を得た側にギャンブルなどで使ってしまったと主張されてしまえば、請求によって返還を受けることができなくなってしまいそうですが、正当な利得ではないと分かって受け取った「悪意の利得者」と証明することができれば、返還請求する道は残されていると言えます。
2023年11月28日 ご執筆M様
(※ 解説内容は、執筆当時の情報をもとにしております)