第18条 【※ 本条解説へ移動する】
何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
日本国憲法 第三章 国民の権利及び義務 条文一覧
以下、解説です。
【日本国憲法18条解説】
憲法18条は、自由権のうち身体的自由に属する「奴隷的拘束・苦役からの自由」について定めたものです。人権を保障するためにはまず、自由に行動できることが前提となるため、人権を保障するための基本規定と考えることもできるでしょう。
「奴隷的拘束」とは人権を否定されているような非人間的状態におかれることを言い、「その意に反する苦役」とは本人の意思に反して強制される労役を指しています。
奴隷的拘束と異なり、苦役には「本人の意に反する」という文言がついています。ここからわかるように、奴隷的拘束は、仮に本人の同意があったとしても、絶対的に禁じられています。それに対し、苦役は本人の同意があれば問題はないとされています。
例えば、強制的に土木工事に従事させられることは、「本人の意に反する苦役」にあたり、許されません。ただ、災害の発生防止、災害の拡大防止、災害時の救助など、緊急の必要があると認められる応急措置の業務への従事は、憲法18条に反するものではないと解釈されています。実際、災害対策基本法65条や災害救助法8条には、その内容が条文として定められており、公共の福祉のために強制的に業務に従事させるケースは認められていると言えるでしょう。
一方で、犯罪による処罰の場合は、どうなるのでしょうか。
懲役刑は、受刑者を刑務所等に収容して強制的に労働に従事させるものですが、これは条文にも明記されている通り、「本人の意に反する苦役」の例外とされています。しかし、「奴隷的拘束」は絶対的に禁じられているため、身体を非人間的に拘束するものであってはなりません。
これら以外に、強制的に公的な役務等に従事させる例として、「徴兵制」や「裁判員制度」があります。
徴兵制は兵役を強制するもので、「本人の意に反する苦役」に該当するというのが一般的な考え方であり、政府も同様の見解を出しています。自衛隊は、強制的に動員されるものではなく、本人の意思に基づいて応募があり採用されているため、「本人の意思に反する苦役」には該当しません。
裁判員制度は、特定の刑事裁判で、国民から選ばれた裁判員が裁判官とともに審理に参加する制度です。裁判員に選ばれた場合、出頭義務があり、法律に定められた理由がない限り拒否することはできません。しかし、日本で実際に制度が導入されていることからもわかる通り、「苦役」にはあたらないと考えられており、憲法違反の制度ではないとされています。
2023年4月30日 ご執筆M様
(※ 解説内容は、執筆当時の情報をもとにしております)