民法 第826条第1項


(利益相反行為) ※ 本条解説へ移動する
第826条第1項

 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

民法 第四編 第四章 親権 条文一覧




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以下、解説です。


【民法826条1項解説】

1.趣旨
本条の趣旨は、親権の濫用から子どもの利益を保護することにあります。親権を行使する父又は母とその子どもの利益が相反する行為(利益相反行為)について、そのまま親権者が親権を行使できるとすると、子どもの利益を侵害する可能性が高いため、利益相反行為については、特別代理人の選任を請求しなければならないとしています。

2.利益が相反する行為(利益相反行為)とは
利益相反行為とは、親権者のために利益であって子どものために不利益な行為又は、親権に服する子どもの一方にとって利益で他方にとっては不利益な行為のことを言います。

3.利益相反行為の判断基準
⑴ 利益相反行為に該当するか否かは、もっぱらその行為の外形で判断すべきであり、親権者の意図やその行為の実質的効果から判断すべきではないとされています(最判昭和49年7月22日)。

⑵ 1人の親権者が数人の未成年者の法定代理人として代理行為をした場合、全ての未成年者との関係で利益相反行為に該当します。
そのため、父の相続手続きにおいて、母が財産を取得しない場合であっても、母が未成年者の子2人の代理人として他の成人した子との間で行った遺産分割協議は追認なき限り無効となります。

⑶ 親権者が他人からお金を借り入れる際に、親権者として子どもを連帯債務者とし、子どもの所有する不動産に抵当権を設定する行為は、利益相反行為に該当します。

⑷ 親が他人の債務について子どもと一緒に連帯保証人となり、子どもとの共有不動産の全部に抵当権を設定することは利益相反行為に該当します(最判昭和43年10月8日)。

⑸ 親権者が子どもの名においてお金を借りて、子どもの不動産に抵当権を設定することは、その目的が親権者自身の用途にお金を使うことにあっても利益相反行為には該当しません(最判平成4年12月10日)。
この行為は、親権者の意図を考慮せず、外形で判断すると、子どもが自分で借金をする際に不動産に抵当権を設定した行為に過ぎないためです。
もっとも、利益相反行為には該当しない行為であっても、親権者の代理権濫用に当たる可能性は残されます。

4.親権者の一方とだけ利益相反行為となる場合
父母など共同親権者のうち1人とだけ利益相反行為となる場合には、もう1人の親権者と特別代理人との共同代理となります(最判昭和35年2月25日)。
利益が相反しない親権者が1人で親権を行使できる訳ではありません。

5.利益相反行為の効果
利益相反行為が行われた場合、親権者が子どもを代理した行為は無権代理(民法108条2項)となります。
そのため、子どもが成年に達した後に、その行為を追認するなどしなければその効力が本人に及ぶことはありません。

 

2022年8月12日 ご執筆T様
(※ 解説内容は、執筆当時の情報をもとにしております)

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