(意思表示の効力発生時期等) 【※ 本条解説へ移動する】
第97条第1項
意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。
民法 第一編 第五章 法律行為 条文一覧
以下、解説です。
【民法97条1項解説】
意思表示は、その通知が相手方に到達することで有効となります。
もし、意思表示をしたことだけで、通知が到達しなくても有効になってしまうのであれば、相手に伝えなくても契約などが成立してしまうことになり、トラブルになってしまうことでしょう。そのようなことが起きないよう、民法は、通知が到達することで効力が生じる「到達主義」を採用しています。
到達主義に対して、意思表示をすることで効力が発生するという考え方が「発信主義」です。2017年の改正前は、民法97条1項の例外として、民法526条に「隔地者間の契約における、申込に対する承諾」に限っては、契約を早期成立させて取引をスムーズに進めるために、発信主義を採用していました。
ただ、現在は通信手段が発展し、通知が到達するまでの時間が短縮されているため、改正を機に民法526条は削除されました(欠番となったわけではなく、別の規定に変わっています)。現在の民法97条1項は、対面であっても隔地者であっても、到達主義となっています。
では、どのような状態をもって「到達」と判断されるのでしょうか。
この点については、「意思表示が相手方の勢力範囲に入り、その了知可能な状態に置かれたこと」とする判例(最判昭和36年4月20日)があります。
了知とは「はっきりと知ること」という意味で、法解釈としては「相手が受け取って内容を確認したこと」となります。「了知可能な状態に置かれたこと」であっても到達したと認められる点には注意が必要です。
上記の判例では、「郵便物(催告書)が、受取人である代表取締役が不在のときに届いた。そのとき会社に遊びに来ていた家族が、代表取締役の印鑑を使って受領印を押して受取り、代表取締役の引き出しに入れた。しかし、そのことを誰にも告げていなかった」というケースです。これが「了知可能な状態」と判断され、郵便物は到達し、意思表示は効力を生じていると判断されました。
2022年7月19日 ご執筆M様
(※ 解説内容は、執筆当時の情報をもとにしております)