(公示による意思表示) 【※ 本条解説へ移動する】
第98条第3項
公示による意思表示は、最後に官報に掲載した日又はその掲載に代わる掲示を始めた日から二週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなす。ただし、表意者が相手方を知らないこと又はその所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力を生じない。
民法 第一編 第五章 法律行為 条文一覧
以下、解説です。
【民法98条3項解説】
民法98条3項は、民法98条1項に定める「公示による意思表示」の効果が生じる条件について定めたものです。
民法97条1項に定める通常の意思表示は、通知が到達することで効果が生じる「到達主義」を採っています。しかし、相手方やその所在がわからない場合は、そもそも意思表示を届けることができません。そこで、公示による意思表示では、「公示から2週間後に、相手方に意思表示が到達したものとみなす」とされています。
具体的には、「最後に官報またはそれに代わる役所等への掲示を始めた日から2週間後」となります。
ただし、表意者側に過失があって相手方やその所在を知らない場合は、公示による意思表示が到達したという効力は発生しないこととされています。
「相手方が誰なのか、相手方がどこにいるのかについて把握できたはずなのに、それを怠ったために意思表示ができない」という場合まで、表意者側を保護する理由はないからです。相手方が、公示による意思表示に対して、「表意者に過失があった」と立証した場合、この規定に基づいて無効とされます。
なお、公示による意思表示は、意思表示が到達したという効力が生じるまで最低でも2週間かかります。そのため、緊急の対応が必要になって意思表示したい場合には、公示による意思表示をすることができても、適切な対応ができなくなってしまう可能性があります。
相手方やその所在がわからなくなった場合の救済措置があるといっても、その制度に頼らずとも対応できるよう、「相手方の住所や連絡先が変わった場合の通知義務」を定めておくなど、問題が起きない契約にしておくことが大切です。
2022年10月8日 ご執筆M様
(※ 解説内容は、執筆当時の情報をもとにしております)