(法定地上権) 【※ 本条解説へ移動する】
第388条
土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。
民法 第二編 第十章 抵当権 条文一覧
以下、解説です。
【民法388条解説】
法定地上権とは、ある条件のもとに、土地の上に存在する建物に対して法律で成立させた地上権のことです。
地上権とは、他人の土地において工作物又は竹木を所有するためその土地を使用する権利です(民法265条)。
抵当権の実行によって土地と建物の所有者が異なることになった場合に、建物の所有者に地上権が成立しない(無権限者)となると、土地所有者から建物撤去、立ち退きを要求される可能性があります。建物を壊すことになれば不経済ですし、そのような可能性があれば、債権者が建物に抵当権を設定したとしても購入する人が現れないため、抵当権を設定して債権回収を図ることができません。
【成立要件】
①抵当権設定当時、土地及びその土地の上に存在する建物が同一の所有者に属すること
地上権とは、前述のとおり土地を使用する権利ですので、土地と建物の所有者がもともと別々の場合、建物所有者には何らかの利用権が設定されているのが普通です。したがって、土地と建物の所有者が同一でない場合には、法定地上権の成立は問題になりません。
②土地又は建物のどちらか一方または双方に抵当権が設定されたこと
③抵当権の実行によって土地と建物が別々の所有者に属することになったこと
【具体例】
①建物の登記が未登記の場合
→抵当権設定当時に土地と建物の所有者が同じであれば、たとえ建物が未登記であったとしても、上記要件を満たす場合と状況が異なることはなく、建物所有者に法定地上権が成立します。
②抵当権設定後に土地と建物の所有者が別々になった場合
→抵当権設定当時、土地と建物の所有者が同一であれば、その後に所有者が別々になったとしても、本条の要件は満たし、法定地上権は成立します。
③抵当権設定当時、土地の上には建物がなかったが、後に建物が築造された場合
→抵当権者は、土地を更地として評価して抵当権を設定しているため、抵当権設定後に建物を築造し、建物所有者に地上権が成立するとすれば、抵当権者にとって不利益が生じるため、法定地上権は成立しません。
また、抵当権は土地のみに設定されているため土地のみを売却しようとすると、建物の撤去などの請求をする必要性から土地の売却価格は下がってしまいます。そこで、民法389条1項により、土地と建物を一緒に売却することができます。
④更地に抵当権を設定した後に、土地上に建物を築造され、その土地上に他の債権者が2番抵当権を設定した場合
→③と同様に、建物に法定地上権が成立するとすれば、1番抵当権者が抵当権を設定した当時の土地の担保価値が下がり、利益を害するため、法定地上権は成立しません。
2021年12月5日 ご執筆U様
(※ 解説内容は、執筆当時の情報をもとにしております)