(目的物の滅失等についての危険の移転) 【※ 本条解説へ移動する】
第567条第1項
売主が買主に目的物(売買の目的として特定したものに限る。以下この条において同じ。)を引き渡した場合において、その引渡しがあった時以後にその目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、買主は、その滅失又は損傷を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。この場合において、買主は、代金の支払を拒むことができない。
民法 第三編 第二章 契約 条文一覧
以下、解説です。
【民法567条1項解説】
売買契約を締結し、売主が売買の目的物(特定物)を買主に引き渡した後に、当該目的物が滅失または損傷した場合のリスクを、当事者のどちらが負担するかということを規定しています。
本項では、当該目的物の滅失または損傷が当事者双方の責めに帰することができない事由によって起こった場合には、その滅失又は損傷の負担は買主がすることになっています。つまり、目的物を引き渡した後に目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失または損傷したとしても、反対給付としての買主の代金支払い債務について当然には免除されず、予定通り履行する必要があります。
目的物が滅失または損傷したことについて買主は、履行の追完請求(民法562条1項)や、代金減額請求(民法563条1項)、履行遅滞や不完全履行を理由とする損害賠償請求(民法415条1項)及び契約の解除(民法540条1項)をすることはできません。引き渡した後に目的物が滅失または損傷したとしても、それは完全な履行があった後のことということになります。
仮に目的物が引き渡されたあと、買主の過失によって滅失または損傷をした場合にも、もちろん過失は買主の方にあるため、反対給付としての買主の代金支払い債務が免除されることはありません。
一方、目的物を引き渡した後に売主の過失によって目的物が滅失または損傷した場合には、売主に代金支払いを請求する権利はないと言えます。
目的物の引き渡し前の危険負担については、民法536条1項に規定されています。
2021年11月5日 ご執筆U様
(※ 解説内容は、執筆当時の情報をもとにしております)